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万引き家族のenchanのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.1
普通に感想書いてみたらつまらなかったので少しひねくれた事を書きます。私たちはこれを観てきっと"ああ、この家族は可哀想だ。本物の家族よりも深い絆を持ったこの家族を引き裂く社会が悪い。こんな事があってはならない"と思う事でしょう。そして24時間後くらいにはそんな事なんてなかったかのように日常に戻って忘れてしまうでしょう。映画という娯楽を楽しむだけの金銭的余裕がある私たちは、感動をコンテンツのように消費しにいっているわけです。弱者が虐げられる姿をこの目で見たので問題提起でもしましょうか?でも現実には大企業の下請け工場で労基法なんて無視された人々の生活があるからこその豊かな暮らしがあるわけです。所詮無意識のうちに"搾取している側"の人間に加担しているという事実に変わりはないわけです。うすら寒い同情をするくらいなら、"私はある程度金を持っているんだから貧乏人なんて知った事ではない"と開き直った方がまだ筋が通っているというものです。
こういう時に「誰にでも利他的であれ」みたいな宗教じみた事を言うつもりは全く無いです。大事なのは"明日は我が身である"視点だと思います。金銭を失った時、家族の金や会社の保険だって絶対に無くならないとは限らない。大きな怪我や病気で障害を持っただけでも弱者となりえます。恩恵を受けていたはずの社会が牙を向く。それを想像する事ができれば弱者を目の当たりにした時にどう対応するかが「自然と」変わってくるはずです。警察やマスコミが母に非道な言葉を投げかけるシーンがありましたが、もし自分があの権力者の立場ならどうしたか。私たちに出来ることは小さ過ぎるのですが、忘れがちな我々にそれを思い出させ気に留めておくための映画だと思いました。
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