レク

万引き家族のレクのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.6
血の繋がらない擬似家族だからこそ見えてくる愛情や絆は主観的に家族形成の難しさを、時折見せる冷酷さは血の繋がりが全てではないことを客観的に炙り出す。
また血が繋がっていないが故の軽視。

『誰も知らない』『海街diary』『そして父になる』など複雑な家族の形を。
そして『三度目の殺人』でも血の繋がらない親子のような擬似家族の関係と罪に対する意識を客観的に描き出している。
是枝裕和監督が今までに手掛けてきた家族の在り方や絆の集大成とも言える。

何故彼らは寄り添い生きるのか?
この作品は擬似家族の幸せそうな構図を見せる。
観客はいつしかその主観的な視点で感情移入してしまうのだ。
一方で、本来は社会的に良心である警察側が我々の目にはそうは映らない。
家族愛という不可視で曖昧なものを客観的な視点による現実の厳しさで生々しく描き出したこの作品は物凄く複雑で重い。

演技の面でも圧倒されてしまった。
勿論、リリーフランキーさんも松岡茉優さんも樹木希林さんも子供たちも、脇を固める俳優陣たちも素晴らしいのですが、安藤サクラさんの心情が吐露される迫真の演技が絶品。

母親のようで母親でない立ち位置。
終盤は安藤サクラさんの演技ひとつで見入ってしまった。
いや、違うな。
演技に引き込まれてしまったんだ。
複雑な心境が全てあの表情に詰まっていた。
観た後の余韻、物凄く複雑な気分でした。
レク

レク