touch

万引き家族のtouchのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.2
"内緒だぞ 俺たちは家族だ"
* * *
祝・カンヌ映画祭 パルムドール受賞!
今や日本を代表する監督:是枝裕和が仕掛ける"実力派怪優"の夢の共演
東京の片隅でひっそりと生にしがみつく、奇妙な縁で結ばれた"家族"たちの即興的セッション
その生々しい息遣いに圧倒された。
映画好きならずとも、是非チェックしておきたい一本。
.
『そして父になる』『海街diary』と
"家族"をテーマにした映画を撮り続けてきた是枝監督。
今回はその集大成とも言えるだろう。
"血縁関係を超えた絆"にフォーカスすることで、逆説的に"家族とは何なのか"を改めて世に問う痛烈な作品となっている。
.
後ろ暗い過去と秘密を抱えている
という共通点で結ばれた歪な関係の彼ら
互いの古傷を詮索することなく、欺瞞から目を背けながら緩やかに助け合って暮らしている。
見えること・見えないこと・見て見ぬふりしていること
本音と建前、人間の心理に潜む表裏一体のグロテスクな部分を描き出す。
これは監督の前作『三度目の殺人』から共通するテーマだ。
.
とにかく自然体の演技に痺れた。
『ザ・ノンフィクション』の密着ドキュメンタリーのような空気感
そこには確かに暮らしがあった。
"私たちが生活する世界の地続きに、このコミュニティは実在し得るんだ"と思わせる説得力。
異様なまでのリアル感が、そのリアリティをもって深刻な社会問題を突きつけてきた時、
ただ胸を締めつけられた。
.
嘘と善意、搾取と施し、愛と憎しみ
二律背反の内的要因と外的要因が渦巻き、やがて家族は崩壊していく。
.
マスコミは事件を面白おかしく騒ぎ立て、義理人情など踏み躙る。
警察は不整合なはみ出し者を完膚なきまでに叩きのめし、排除しようとする。
それは"現代社会に漂う殺伐とした空気"そのものだった。
.
特に強烈だったのがエリート刑事の尋問シーンだ。
彼らは正義の名の下にマウントをとってかかり、正論を振りかざす。
取りつく島もないほど筋が通った冷酷な正しさ
容赦なく追い詰められる彼らを見て、どうにもやりきれない気持ちになる。
そう。私たちは事の顛末の全てを知っているから。
"あの時 どうすべきだった"なんて、
軽率な答えを出すことはできそうにない。
.
カンヌをはじめ各所で絶賛されている通り、安藤サクラの演技が本当に素晴らしい。
閉塞感の中に一筋の希望を感じさせるラストの余韻も心地良かった。
touch

touch