うりた

万引き家族のうりたのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.0
自分の想像出来る「人間らしさ」なんてこの世界のほんの一部でしかない。人間はもっと複雑で難しくて可能性を秘めた生き物だ。
もしこの家族の報道を私が見ていたら、彼らの美しい生活を想像できていただろうか?きっとできない。いや、絶対にできてない。
普段から人間嫌いを公言している自分は、もっと人間というものに向き合うべきだと少し反省した。

外野からだけじゃない。内野にいたって、つまり登場人物同士でだって彼らの本当の気持ちや思惑はわからない。人間は分かり合えない。どんなに人が集ってもきっとどこかに孤独がある。
でも、だからこそ、つながれたような気になった時の幸せに生かされる。
人生という「線」で見るか、刹那という「点」で見るか。それによってこの映画の見方は変わる。

心境?としての感想はさておき、演技と構成はさすがに素晴らしかった。
リリー・フランキーも松岡茉優も子役の2人も良かったけど、何も言わなくたって表情と仕草だけで泣かせにくる樹木希林と安藤サクラは国宝級。

2時間の枠の中でこれだけの人数の登場人物全ての人間性を掘り下げている脚本の力も大いに感じた。
誰一人として物足りなさや『オマケ感』がなく、かといって詰め込み過ぎな印象もない。
エピソードのバランスも本当にうまく練られていると思う。
パルム・ドール受賞おめでとうございました。
うりた

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