よどるふ

万引き家族のよどるふのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
5.0
タイトルに"万引き"とあるものの、そこだけがメインではない。それどころか、日頃ニュースで見聞きするような社会問題のテーマ全部乗せの具沢山大盛りみたいな映画で満腹感を感じた。予告の"絆"というワードに無駄に身構える必要はまったくなし。

劇中で"絆"というワードをハッキリと出すシーンがあり、そこの自覚的なニュアンスは「あ、この作品は信頼できるな」と確信させてくれる。是枝裕和監督作、これが観るの初めてだったのだ。というか鑑賞後だと、キャッチコピーの「盗んだのは、絆でした。」の意味が分からなくなった。

とにかく会話の端々からこの家族の「事情を汲み取らせる」演出が素晴らしい。説明のためのセリフはなく、直接的な過去回想をはさむこともなく。あと音楽も主張し過ぎずで。役者陣の演技は、キャストの時点で凄いんだろうなと思っていた以上に凄すぎて、始終ニコニコしながら観ていた。

思っていたより笑いどころが多く、実際、劇場ではクスクス笑いや吹き出し笑いがたびたび起こっていた。途中、「ここな一番の不謹慎な笑いどころだ」と思うところがあったのだが、あまりにもタイムリー過ぎるために(笑えない……)と思った。

見かねて誘拐してきた女の子との関係性が良くなっていくのは予告で観た通りとしても、序盤の鍋を囲むシーンで女の子ひとりだけポテチつまんでるっていう、「え? 連れてきておいて、何その処遇?」と思わせる匙加減が絶妙で上手いなあと思ったところ。

扱いが非人道的なことには絶対にならないにせよ、その「え?」と思わせるところは、例えば、松岡茉優演じる亜紀の“お仕事描写"のあと、亜紀と女の子のちょっと微笑ましい会話、あれを「姿見の前」でやっているところもそう。

以下余談。予告は終盤の展開をバラし過ぎだと思う。その終盤で、あの家族のこれまでに思いを馳せていたら、ふと『クリーピー 偽りの隣人』が頭をよぎり、「そういえば犬・猫みたいなペットって出てこないな」と思った。まあ今作にはちょっと嵌らないピースなのかな。
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