ふふみ

万引き家族のふふみのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.5
是枝監督作品には正直あまり好きなものがないけど、これは「誰も知らない」と同じくらい見入ってしまう作品だった。
カンヌ受けする映画だと納得。
もっとセンセーショナルに描くことも可能なテーマだし、いくらでも御涙頂戴に仕上げることは可能なストーリー。
でもそれをやっちゃうと俗的になってしまうのが目に見えてる。
それでは本場アカデミーで良い線まで行ったとしても、カンヌでパルム・ドールを獲ることはなかっただろう。

是枝監督の脚本は特に好みじゃなくても、その繊細な演出にはいつも感心する。
この映画も登場人物の誰もが最後まで感情を爆発させない。
人物描写がとても繊細で、その輪郭を濃くし過ぎないように努めているように感じる。
だからこそ、画面に映し出される人物について最大限に観察しながら「本当はどういう人間なのか」「今何を考えているのか」「これまでどのように生きてきたのか」そういうことを考えさせられる。
観ている側をそうさせることで充分に引き込み、表面化しない部分まで印象付けることが出来る。
人の頭(感情)を動かすことが出来る。
何も考えなくても意味が分かるくらい感情表現があからさまで説明が多い映画にはそれが出来ない。
好き嫌いは置いといて、間違いなく上質な演出が出来る監督だと思う。いつか好みの映画を作って欲しい監督。

一部で批判する人もいたらしいけど、犯罪を正当化する内容では全くなかった。
そう捉えてしまった人は、ただ画面を観るだけでなく、ちゃんと汲み取ったり察したりしながら観ることが出来ていたのだろうかと心配になった。
もしかすると偏った目線で観てしまった人も多いのかもしれない。
家族の誰かの主観に立ってしまったり、反対に俯瞰で見すぎてしまったりしているなら、映画の世界観に寄り添いながら少しだけ外側からこの家族を見てみたらどうだろう?
例えば柄本明が演じた駄菓子屋の店主の目線くらいで。
あの環境でも成長と共にしっかりと自分で善悪を見分けられるようになった少年のように、どんなものを見ても自分で考える力はどの子供にもあるはず。
ふふみ

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