Hailey

万引き家族のHaileyのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.2
貧困と児童虐待という重めなテーマを重すぎず軽すぎず描いていて、他の社会派映画と違う感じがした。テーマに対して表現が過激になり過ぎず、リアリティがあった。万引きというキーワードは決して正当化されないにも関わらず、法とは何だろう?と思ってしまった。また、「家族」という大きなテーマに関して、繋がる理由に言及し、その脆さと歪さ、「他人」としての限界、それでも苦楽を共にする繋がりの強さを見た。極度の貧困の中にも庶民なら共感できる素朴さが詰まっていて、どこか懐かしさがあった。冬から夏、夏から冬と移りゆく季節の対比が時の流れを感じさせた。音楽も、流れを作るのではなく、一瞬の感情と共鳴してとても良かった。前半では貧しくも幸せな生活が描かれるのに対して、後半は一つ一つ、描かれていなかった闇が照らされていくところが切なかった。警察官の最もらしい鋭い質問が憎らしかった。正論という暴力を振るう世間のようだった。強い絆は確かにそこにあるのに、何かが崩れると全てが消えてしまう儚さがあった。物語としての盛り上がりはあるものの、泣かせに来たりする派手な演出がなく、絶妙な重量感だった。
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