2049

劇場版 幼女戦記の2049のレビュー・感想・評価

劇場版 幼女戦記(2019年製作の映画)
4.5
タイトルのせいで敬遠されている戦争アニメの劇場版。
同僚の逆恨みで殺された超合理主義者のサラリーマンが、創造主を名乗る『存在X』によって無信仰を咎められ信仰心を持つために大戦中の異世界に転生させられる。
ターニャ・デグレチャフという孤児として転生させられたサラリーマンは生まれ持った魔力により幼女ながら徴募され、最前線に送り込まれる。

異世界モノはライトノベルやマンガで大流行中だが、本作も異世界モノと言えるのかも。
原作小説は未読。コミカライズも未読。アニメは全て視聴済み。タイトルから受ける印象とは真逆の骨太な戦争アニメであり、音響や爆発表現など徹底したリアルさを追求した戦闘描写や、主人公デグレチャフ少佐の厨二心を刺激するかっこよすぎるセリフ、口上など見所満載の作品。

本作はTVアニメの総集編ではなく続編を描いた作品になる。
連邦国境付近にて、大規模動員の兆しあり…参謀本部からの特命によりデグレチャフ少佐率いる帝国軍二○三航空魔導大隊は再び最前線の戦火の中へと送り込まれる。
時を同じくしてデグレチャフ少佐に父を殺された少女、メアリー・スー准尉は多国籍義勇軍として銃を手に取る。

明らかに実際の世界大戦をベースにした物語でありそこから来るリアリズムと戦闘描写の緻密さ、妥協の無さが見事にリンクしている点が本作の魅力だと思う。

また本作はデグレチャフ少佐とスー准尉という『悪魔の使者』vs『神の使者』との戦いとも受け取れる設定は非常に面白い。ダーティハリーやダークナイトで描かれたテーマとも多少通ずる部分があるように感じる。
主人公デグレチャフ少佐が悪魔的な存在であり、帝国軍(明らかにナチスがモデル)に属しているという設定は攻めに攻めた、とんでもないアイデアではないだろうか。

戦闘機vs魔導師の空戦、列車砲や対空砲の発射音や描写の恐ろしいほどのリアルさ、魔導師の銃撃により起こる大爆発の噴煙、巻き起こる衝撃波、キノコ雲…戦争描写はどれをとっても凄まじく、ここまでリアルな『戦場』を描いてみせたアニメーション作品は他に無いんじゃないだろうか。

そして本作の白眉は、やはりデグレチャフ少佐とスー准尉の死闘だろう。
神と悪魔の最終戦争を描いた宗教画のような分厚い黒雲を背景に激しい撃ち合いを繰り広げたかと思うと、低空で市街地に突入し尋常ではないスピード感と迫力をもって展開する追撃戦。
ラストは教会で聖母マリアのような像をバックに鮮血が飛び散る…本当に良く出来た作品だ。

デグレチャフ少佐のセリフも相変わらず超かっこいい。

「敵魔導大隊のケツに鉛玉をぶち込んでやれ!」
「理性に基づく自由意思において、殺そう」

うーんかっこいい!

戦争を徹底したエンターテイメント作品に昇華した作り手達に拍手を送りたい。
タイトルで敬遠している方は是非鑑賞してほしい傑作だ。

2049

2049