櫻イミト

祈りの櫻イミトのネタバレレビュー・内容・結末

祈り(1967年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

カンヌ映画祭グランプリ受賞作「懺悔」(1984)のテンギズ・アブラゼ監督による「祈り 三部作」第一作。ジョージア(=グルジア)の有名な叙事詩の映画化。

「人間の美しい本性は滅びることはない」・・・ジョージアの山岳地帯。キリスト教徒の村の兵士グヴティシアは、対立するイスラム教徒の村の兵士と山中で出会い銃撃戦の末に射殺。村では敵を殺したら右腕を切り取って持ち帰るのが掟だったが、彼は守らなかったたために家を焼かれ村から追放される。放浪し辿り着いた山中で、彼は敵の猟師マツイリと出会う。マツイリは疲弊している彼を自宅で保護するが、これを知ったイスラム教徒の村人たちは「敵をかくまった」とマツイリを非難し刺殺。さらにグヴディシアを彼が殺した男の墓の前に連れて行き処刑する。そして女神も絞首刑にさらされるのだが。。。※映画の随所に美しい女神と彼女を凌辱しようとする悪魔のイメージが挿入される

物凄い映画だった。荘厳なモノクロ映像に茫然とした。

抽象的な叙事詩の映画化であり、ジョージアの歴史知識が皆無なため、理解できたとは到底言えないが、その聖性を帯びた映像とモンタージュから、不寛容の愚かさと平和への祈りが力強く伝わってきた。

同監督の「青い目のロバ」(1956)でも感じたが、ジョージアのロケーションに圧倒される。荒涼とした大地を俯瞰で捉えた時にポツンと置かれた人間の小ささ。一方、青空をバックに仰角で捉えたカットは人間の尊厳を表わしている。

初見では本作に全然近づけないので、また繰り返し観て追記していきたい。

IMDbで海外レビュアーが本作を「ベルイマンと黒澤明がジョージアに行って山で一緒にシェイクスピアをやろうと決めたようなもの」と表現していて成程と思った。私なりには取り合えず「カール・デオドア・ドライヤーとパゾリーニが・・・」と例えておく。聖と魔の両極として。
櫻イミト

櫻イミト