ヨウ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのヨウのレビュー・感想・評価

4.8
再投稿。この作品、今年の4月くらいに初めて観た時はその良さがよく分からなかったんだけど、誰もが絶賛する中で自分だけが魅力を見出せずにいるのは悔し過ぎるので、タランティーノ監督作品マラソンの終焉として改めて鑑賞してみた。タランティーノの作風を理解し、シャロンテート事件の予習もしっかりして満を持して臨んだ結果、もう大好きな映画となってしまった。こりゃワンハリ沼にハマってしまったようだ。初見時の自分は一体何だったのだろう…

ストーリー、演出、音楽、キャスト陣、雰囲気、全てにおいて最高到達点に至っている。どこから褒めたらいいのか分からないくらい完璧な仕上がり。160分という映画時間が本当にあっという間だった。究極に粋で細部に渡って整えられたムードの中に終始のめり込むしかなかった。

光と闇の対比具合が際立つ人間ドラマは我々の心に強く響くものであり、異常なほどの面白さを放つ。葛藤を抱えながら何とか輝きを取り戻そうとするリックと、彼を支えながら真っ直ぐな面持ちで我が道を歩むクリフが絶妙な化学反応を生み出し、それぞれに降りかかる奇妙な事情が入り込んでくることで作品全体が高尚な領域へと昇華されている。

そして終盤の衝撃展開への繋ぎは天晴れ。脚本の作り込みが凄すぎる。散々に唸らされてしまう。本当は起こっていたであろう悲劇的事件をリックとクリフの絆で覆したということだろうか。監督の遊び心みたいなものを感じられる。
とある方からシャロンテートへの敬愛を示すことで今作に華を添えたという視座を提供してもらい、なるほどなと思った。隠されたメッセージ性に目から鱗。タランティーノの人柄が如実にあらわれていることが伺える。非常に味のある終わり方だった。

映画のエッセンスが凝縮されたようなハリウッドの甘美な夢空間に心ゆくまで浸ることができて幸せだ。全人類に映画の究極形態なるものを示してくれる世紀の大傑作である。レオとブラピの友情劇は最高すぎてもはや泣ける。永遠の憧れだ。クエンティンタランティーノという天才が築き上げてきた集大成が今ここで遺憾なく発揮される。映画を愛する者たちへの敬意が存分に込められた今作に巡り会うことができて誇りに思う。この先何度でも観たい。
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