さんた

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのさんたのレビュー・感想・評価

5.0
*後半にはネタバレが有り

予習必須だなんてとんでもない!
シャロンテートの件を先に知っておいてから観た方が楽しめるという意見が多いようだが、鑑賞後に調べて件を知った時の衝撃と、それを踏まえて作品を思い返す時間は凄く良いものだった。
そしてそれを踏まえて2度目の鑑賞をしたら良いじゃない!

私は前情報を入れたら観た気になってしまうタチなので、ディカプリオが役者でブラッドピットがスタントマンってことだけ知っての鑑賞。
なんならディカプリオ主演作を人生で初めて観たのがコレ。

自分が存在すらしていなかった60年代アメリカ、その空気を吸っているような感覚に陥る程作り込まれた舞台に引き込まれる。
ブラッドピットは老けてもカッコ良すぎるだとかディカプリオも好きになれたとか、相変わらず女の子の足の裏だとか、14の拳カッコよすぎるだろとかブルースリーが威勢の良いアジア人で本当はこういう人だったのだろうなとか、語るに尽きない場面は多いが挙げたらキリがないのでさておき。

イングロリアスバスターズでは映画上映に、デスプルーフではスタントマンに焦点を当てて自身の映画オタクぶりを世に発信したタランティーノ。今作でも相変わらず。
まさに集大成。
彼が劇中に盛り込むネタの半分も知らないが、彼がどれ程映画が好きでどれ程の知識を有しているのかを思うと尊敬しかない。
ここまで情報量の多い作品は他にあるのだろうか。
選曲も毎度のことながら素晴らしい。
ケンタッキーウーマンとバニラファッジはマジで激アツ。

観賞後に色々と読んでみると、これは実際にあった殺害事件を背景に作られた作品だったことを知る。
イングロリアスバスターズと同じく、史実と虚構を巧く混ぜ込んで描いていたんだね。
ディカプリオの隣人である美人の女優さんは、現実ではあのヒッピー共に刺殺されている。劇中同様、胎児を身篭りながら。
しかしこの劇中では。
ヒッピー共が犯行に及ぼうとやかましい車で乗りつけた先の隣人がディカプリオだったのが運の尽き。
後ろの座席のバカ女がディカプリオを殺す提案なんてするもんだから、ヒッピー共は散々な目に遭うこととなった。
ここでのアクションからはタランティーノの怒りがこれでもかと伝わった。
せめて俺の作品では忌々しい現実を変えてやるとの思いが。
少なくとも私にはそう感じた。
そしてその後の隣人とのやりとり(その後はリックダルトンもこの出会いがきっかけでハリウッドでの仕事が増えたのだろう)。
現実で起きた悲劇はタランティーノによって救われたのだ。
なんやかんや、私のような素人は他のどの場面よりもここでタランティーノの映画愛を感じたのであった。
エンディングテーマは、現実では亡き”隣人”への鎮魂歌に感じた。

今作を通じてわかったのは、タランティーノは愛あふれる人物だってこと。
ますます好きになった。

個人的見所
・侵入してきたヒッピーと対峙した時のブラッドピットの笑い方。
ファイトクラブでも書いたが彼の笑い方って本当に好き。
・エンドクレジットで流れる「60年代バットマン」のテーマソング!
SOCK!POW!ZOK!
さんた

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