名倉

I am Sam アイ・アム・サムの名倉のレビュー・感想・評価

I am Sam アイ・アム・サム(2001年製作の映画)
4.1

ショーンペン演じるサムとダコタファニング演じるルーシーが本当に終始愛おしく、2時間観ても全く飽きることなく楽しめる作品です。


サムのキャラの性質上、その嘘偽り無いピュアな言動は少しコメディアンっぽくもあり、映画自体がまるでMr.ビーンを観ている様でとても楽しかったです。彼を取り囲む友人達もユニークで、サムと同じ様な症状を抱えている彼らですが、友達思いで情に熱く、サムが困っていれば真っ先に助けてくれる心強い関係です。サム自身がコメディアンっぽいのにその友達もみな同じ様に面白いので、彼らの掛け合いは一種の喜劇を観ている様な感覚でした。


実際に彼らの中には知的障害を抱えた役者が混ざっており、その為セリフがアドリブになってしまう場面もいくつかあった様です。逆にそれが映画によりリアリティをもたらし、彼らはこの映画に欠かせない存在になりました。


今回サムとルーシーの親子愛を描く展開で泣かされるシーンも多々ありますが、私が今作で一番泣いたのは、リタが依頼人のサムに弱音を吐き泣き崩れるシーンです。


彼女もまた映画では非常に愛くるしい存在で散々周囲から疎ましく思われていますが、家族との良好な関係を取り戻すべく彼女なりに奮闘し、これまでの自分から変わろうとしています。無料報酬の依頼人のサムに振り回されて彼女自身も疲労困憊で限界を迎えますが、彼とルーシーの絆の深さに触れていくうちに、家族との正しい向き合い方に気付かされていきます。サムという大人な発想の悩みに囚われない純真無垢な存在に彼女の悩みは浄化されていくのです。そんなリタを優しくサムが抱きしめるシーンは本当に涙が止まりませんでした。


今回サムを演じたショーンペンは、言葉詰まりや妙な手癖の細かい所まで表現し、普段の渋さを抑え、サムを演じ切っています。しかし、リタにネクタイを結んでもらうシーンでは、ショーンペンのカッコ良さが溢れ出てしまい、思わず「え!?まさかキスしちゃうの!?」と一人で謎に勘繰ってしまいました。


少し話は逸れますが、今作には至る所でビートルズに関わる作品が出てきます。これは取材した施設の入所者の人たちが皆んなビートルズが好きだったということから使われるに至った様です。主人公のサム自身もビートルズが大好きで、設定ではルーシーの名前も名曲「Lucy in the sky with daiamond」にちなみルーシーと名付けています。BGMにはビートルズのカバー曲が多用されていますが、オリジナル版の使用は著作料が高額過ぎて使えなかったらしいです。逆にその結果が今作にプラスに働いた様に思います。その点もこの映画を名作に彩った部分でもあると思います。


ダコタちゃんは言うまでもなく最高に可愛くて演技も卓越し、障害を抱えるサムにも何の偏見も持たず父親として愛する屈託のない演技を披露しています。まだ幼いから、という訳ではなく彼女の演技からはきっと何才になってもサムを変わらず愛し続けるルーシーの優しく温かい姿が想像出来ます。それを納得させるだけの演技がダコタちゃんからは感じ取れ、まさにルーシーとして100点の配役だった様に思います。ダコタちゃんという子役が変に悪目立ちする事なく、サムを優しく支える健気な娘役として綺麗に収まっているのは、主人公であるショーンペンの圧巻の演技により良い意味で彼女の存在がサブ的な立ち位置になっているからだと考えると、やはり今作のショーンペンの演技は圧巻だったなと思います。


私がこの映画を好きな理由の一つにラブロマンスが一切含まれないという点があります。主人公のサムは知能が7歳なので、大人なラブストーリー展開は描けません。リタとの間にもそれを感じる要素が一切無く、サムがリタを抱きしめても安心して見ていられます。ラブロマンス要素が入ってくると映画によっては気持ちが冷めてしまうことがあり、この映画ももしそういう要素が入れば全く違った映画になってしまったと思います。一貫してそういった要素を排除してくれたのは個人的に嬉しかったです。


裁判シーンが多く、重い雰囲気が続きますが、サムやサムの友人のおかげでそんな空気も上手くぶち壊してくれていたのでコメディ要素満載で楽しめました。親子ものの映画が好きな人には是非オススメです。


愛こそ全てよ☆〜(ゝ。∂)
名倉

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