HarunaYagi

イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語のHarunaYagiのレビュー・感想・評価

4.3
観てる側はひたすら「モリッシー」になる日を待つ、ひたすら待つ。いつか「彼」が確実に誕生すること、それを導く灯の存在を知っている。でもまだそこにはない。発する言葉は僅かで、毒に満ちた想いを紙にしたため続けるひとりの青年、「スティーブン」を観た。

70年代後半以降に20歳前後の日々を過ごしたマンチェスターのワーキングクラスの無口だけど傲慢な青年の苦悩の日々を描いた映画としてとても秀逸だったと思う。ジャックロウデン、凄い。

彼が燻り続けた時間、強い承認欲求と何も出来ない苦しみを小さな部屋で吐き出す日々。そしてそれを支えたり時に突き放したりしながらもひたすら見守る女性達。

きっとあの行列(複数)の中に同じような夢を持ち、でも、叶えられなかった人がたくさんいるのだろうと思う。そんな当時の社会の鬱屈とした感じも垣間見れ、権利関係もあろうけど、驚くほど「その後」を感じさせる要素を削ぎ落とした構成がとても良かったと思う。タイトルの選び方も完璧じゃないですかね。


モリッシーが公認したらそれはそれでモリッシーらしくないんじゃ?なんて思ったりもする。
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