うみとしょうねん

イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語のうみとしょうねんのレビュー・感想・評価

2.9
自分は主人公のスティーブンと同じような鬱屈とした10代を過ごしている中でThe Smithsの音楽に出会ってこれまでずっと聴き続けてきている。

多分ほとんど全部の楽曲を有しているけれど、全ての楽曲のリリックに対して共感や理解をしたり、全ての楽曲の音やメロディが耳に馴染んで聴いているほどの大ファンとは言えないかもしれないが、それでも自分のこれまでの人生にはThe Smithsの音楽とモリッシーの綴るリリックとがいつもそばにあった。

そのThe Smithsのモリッシーの映画が上映される!と知るや否や、大の映画「館」嫌いの自分が珍しく映画館まで足を運んでまで鑑賞したけれど、全体的にボヤ〜っとしていた印象で、観終わった後に残る感慨があまり無かったのが正直なところ。

タイトルでもありStill Illの歌詞にもある「England Is Mine」という言葉にふさわしいと思える場面も見当たらなかった。

自分がその実The Smithsやモリッシーのことをあまりわかっていないからだけかもしれないけれど。

実生活でろくすっぽ他人と関わりもせずほぼ引きこもり状態でただただ映画を観漁ってはFilmarksに記録して、というのを続けることしかできず悶々とした日々を送ってる自分ってまさにこの映画の前半で描かれているスティーブンと一緒だなぁとは思った。

鬱屈とした人物像やそういう日々が描かれていることや、スティーブンの吐く言葉に対しては、自分も同じようなヤツだったのでむしろ共感しかなかったが、共感以上のものをなかなか感じ得ることができなかった。

何も調べずに、下手したらポスターに書いてある文言すらろくに見ずに鑑賞したから、The Smiths結成後まで描かれたり、思い入れの強いあのThe Smithsの曲を劇場で聴けるかも!と勝手に期待していたのは完全に自分のミスだった。

実在の人物系の映画の宿命だろうけど、モリッシー役の俳優が普通にイケメンだったからちょっと違和感あり。

収穫としては、劇場の近くにある魔窟・SHIBUYA TSUTAYAでわんさか普段入手しづらい映画を借りてこられたことだ。(1日じゃ足りないが)

モリッシーの歌詞を借りるならば「今夜出かけるんだけど着ていく服が無い」ならぬ「今夜映画を観に行くけれど誘える友達を一人も持っていない」自分にとっては、滅多に訪れない都心の、それも土曜の夜という非日常であり自分とは真逆の性質の世界で、駅までの通りを、鑑賞後のモヤモヤ感、人混み、抗不安薬による眠気...等々が重なったまさにhazeの中をmiserableな気分でヘトヘトになりながら歩いて帰路に着きましたとさ。

「帰るまでが映画鑑賞です」だとしたらそういう意味では十分にThe Smithsな気分は味わえました。

でもこの映画を観て、ほとんどの曲を持ってるくせに、政治的な?ことを歌ってる曲や音があまり好きになれない曲は敬遠してたりして、今まで好きな数曲ばかりを選り好みして聴いてきていたから、もっと他の曲も聴いたり歌詞について考えたりしてみてもいいかもなあと思えた。

あと、自分はやっぱり「映画館で映画を観る」ことを「他人と同じ空間で同時に同じものを共有する」体験だと個人的に感じ捉えてしまっているようで、それが性格上どう頑張っても苦手なので、この作品もいつも通り家にこもって独りで鑑賞してたらまた違った感慨があったかもしれない。

幸か不幸か、今月もう1本好きな音楽家の映画を劇場で観る機会がありそうなので、苦手意識は少しでも払拭されるだろうか。

(いつもながらレビューというより自分にとっての記録や日記のようなクソ長えものを書いてしまう、そういう風に使っているので)