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マローボーン家の掟のcheeeezmのレビュー・感想・評価

マローボーン家の掟(2017年製作の映画)
4.1
2021.20作目。


想像していたよりずっと良質な作品だった。音楽の使い方がとんでもなく効果的で、派手ではないにしろ、撮り方も心理描写を克明に描いた美しさがあった。
切なくて、苦しくて、でもどうしようもない愛の物語だった。ラストのエンドロールにかけての音楽が美しくて、自然と涙がこぼれた。映画で涙を流したのって、なんか久しぶりだな。

ストーリー展開としては、とんでもなくびっくりっていうわけではないけども、ラストへの持っていき方がどこか新しく思えた。「病んだ心に愛は育めない」。ラストに出てくるとある人の台詞からのアリーの答えが優しくて、途中に出てきた子守唄のような安心感があった。
息遣いとか、表情の目の写し方とか、写実的だったな。最初にアリーが撮った写真みたいな質感があった。
色々考えちゃうと身震いするような恐ろしさがあるんだけど、同時にあたたかい愛が包み込んでくれる感じがあるから、ホラー映画とは言いにくい。寄り添う愛もあるんだよって。

掟系のホラー映画、最近多くない? またそんな感じかな、あんまりホラー映画好きじゃないんだけどな、心臓疲れるし……と思いながらも気になっていた作品。結果、ポスターには掟が明記されてるけど、作中ではやんわり程度だった。それも良き。アニャの出演作品、本作が初めてだったんだけど、そのうさぎ顔の写し方が本当に効果的で、色々観てみたくなりました。
次男好きなんだよなぁ……若干若き日のディカプリオに似てない? 血気盛んな感じとか好みでした。
ちょいちょいびっくりさせる、っていうか、ぞわっとする描写もあるんだけど、ホラー映画の部類に入るほどじゃないかなって作りだった。そういうスリラーとドラマの配合がちょうどいい塩梅で、また観たいな、となる作品だった。
これはミニシアターで全身を使って観たかった気持ち。惜しいことをした。この監督の作品も追っていきたい。


⚠️以下ネタバレ注意⚠️






屋根裏部屋に近付いてはいけない。ずっとそこにいるとどこかで知りながらも、鍵を開けないことでなんとか精神を保っていたのか。保っていた……とは言いづらいけども。
服とか髪で妹弟を映していたけど、身体はアライグマたちと同じ道を辿ったのかな……。
途中まで巨悪に対して家族で一致団結! って映画だと思っててちょっと萎えてた部分もあるけど、飽きさせない緊張ポイントが節々に入れられてて良かった。わりと短尺だし、こういうタイプの作品ってこれくらいの尺がちょうどいいんだろうな、と思った。
大事なところは声だけ、というのも良かったな……いやほんと……個人的にタイプではないから満点近くにはならないけど、ふとしたときに手に取りたい1本です。


他作品のネタバレあり。↓

とある映画が好きな人は絶対好き、とは言えないけど、ぜひ観てほしいと思ってそれがオールタイム・ベストの友人に勧めたけど、「勧められると腰が重くなる」タイプでした。観てくれ……頼む……気持ちはわかるけど……。
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