きぬきぬ

バイスのきぬきぬのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
4.5
あまりの見事さに怖気をふるう。あまりに黒く辛辣にして、釣り好きで家族を愛する一個人の姿も描きながら、理念を無視(拡大解釈というやつ)して権力を追い求めたのであろう男が副大統領(バイス)でありながら大統領という傀儡子を手に入れ怪物化する様の恐ろしさ。
パワーゲーム(ゲームなんて言葉使いたくない)をとても解り易く描いてるところも凄い。というか描かれてることはアメリカという対岸の火事だけど、政治の裏側で似たようなことが起こってるように思えて恐怖した。
衝撃半端ないわ。イラク戦争についてもロブ・ライナー監督「記者たち 衝撃と畏怖の真実」を併せ観ると「記者たち」で描かれたことが解り易くなるという「バイス」の脚本の子気味良いくらいの解説力凄い。巧い!
レズビアンの娘の父であり、政策に引き裂かれないのかと思うところも巧みに切り抜け家族を守る。この父親を娘たちが愛するのも理解できてしまう。
しかしそこで終われば良かったのにと思える瞬間が二度も来る皮肉さ。

こんな恐ろしい話なのに、グレイグ・フレイザーの撮影が美しく素晴らしく、ニコラス・ブリテルの音楽も最高で、役者がまたとんでもなく良いという、怖すぎて凄いもん観てしまった感半端ない。
きぬきぬ

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