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生きてるだけで、愛。のmarimoのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
4.0
「そうか。今回はまあまあ長かったね。」

走りきった先の屋上で2人が佇む姿は作品の余韻に向けての準備のようで、気が付けば彼らに寄り添っている自分がいた。

人間の脳の構造なんて何万年も前から大して変わってないのに、取り巻く環境だけ進化して複雑になっていく。
鬱って言葉の意味は分かるけど、感覚はまったく分からない。

趣里が演じる寧子は、言葉も行動も感情が剥き出しでトゲトゲしい。自分が鬱だと話す彼女の言動の何一つが私には理解できない。
何の共感も無いはずのに、彼女を取り巻く制御ができない感情や症状を見続けていると、不思議と彼女を応援していた。少し歯車が噛み合わないだけ。その少しの差が彼女には不安で怖くて、それを何かに当たって噛みつかないと自分が壊れてしまう。脳の防衛反応のようなものなのだろう。

たった一瞬、5千分の1秒だけ心がつながれば良い。そんな関係って素敵だなと思わされてしまう作品の説得力。

後に残るものは重たいけど、作品全体としては異様な笑が発生したりして、不思議なほど真正面から観ることができた。

趣里さんがすごくて、激しいのに過剰にならない感じの絶妙な演技でした。さすがサラブレッド。
そんな全部持っていっちゃいそうな趣里さんに対して菅田将暉の”静”の演技がこれまた凄くて、相乗効果で凄い空間磁場が出来上がってました。お見事です。

ただ鮮烈に記憶に残るは、サイコな元カノ仲里依紗なのである。ほんと怖すぎ。
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