YokoGoto

愛しのアイリーンのYokoGotoのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
3.9
ー結婚って何?愛するって何?ー
(注意:女性の場合は、映画鑑賞中級者以上でないと厳しいかも)

過疎化の進む田舎町で、非モテの42歳の独身男性が、フィリピンで30人とお見合いした後、1人の女性(アイリーン)をお嫁さんとして連れ帰り、慣れない日本の暮らしに、右往左往しながら、愛を育んでいくホンワカしたラブストーリー.......な~んて生易しいものじゃない!

もちろん、前半のアイリーンをお嫁さんとして連れて帰って、という所までは合っているけれども、その後の主人公2人の怒涛の夫婦生活は、そこからはもはや、目眩にクラクラするほどのジャットコースター。

『ど、ど、どうしてこうなるの!!』

後半にかけての主人公、岩男とアイリーンの運命がホラー過ぎる。
正直、女性が観るには、映画鑑賞中級者以上でないと、結構引くかも。(笑)私も結構、際どいの見てきましたが、流石に、居心地の悪さを感じるシーンが幾つかありました。(笑)

ただ、2人のドタバタ劇のように見えながらも、ちゃんと様々なテーマが走っているので、それはそれで監督の作りの上手さが際立つ作品でした。

過疎化、国際結婚、人種差別、田舎の閉塞感、嫁と姑、等など、現代社会で起こっている陽のあたりにくい部分も、かなりリアルに、そしてシュールな笑いと共に描いている所もすごいです。

狭い田舎町のパチンコ店に勤務する主人公、岩男。
フィリピンから嫁いできた少女、アイリーン。
岩男を溺愛する年老いた母親、ツル。

物語は、これら3人の視点で物語が描かれていて、(岩男・アイリーン・ツルの)それぞれが抱える苦しみと、それぞれが抱く『愛』が描かれていて、どれも激しく狂気に満ちていて、ほんと色々おかしい。

岩男とアイリーンの夫婦愛と、ツルと夫の夫婦愛、さらにはアイリーンとフィリピンの実母との親子関係と、ツルと岩男の親子関係。最も近い家族が目の当たりにする、愛と人間関係の視点が、コロコロ変わりながら一つの物語を描いているので、最後まで飽きずに楽しめます。

とにかく笑いがシュールです。
いい加減にしてくれという、際どい笑い。

しかし、すべてにリアリティが感じられるので、作り物に見えず、自然に物語に入ることができるから不思議です。これが吉田恵輔監督の作家性なのかな?と思いました。

そもそも、本作の吉田恵輔監督は、恋のキラキラ感を撮るのが上手い監督だと思うんですよね。デビュー作の『机のなかみ』の高校生達のキラキラ感しかり、本作『愛しのアイリーン』の一瞬のキラキラ感も、すこぶる美しいんです。

しかしながら、そのキラキラしたものは一瞬で、映画の130分のほとんどは、絶望したくなるほどの苦々しいリアルばかり。もう、どこまで現実を描くのか!と地味〜に落ち込みます。

その中で、埋もれもがきながら物語は、衝撃の展開に進んでいくのですが、最後のオチはなかなかのものでした。
あれほど引っ掻き回しながらも、そこに落ち着きますか!という感じ。

最後には、結婚ってなんだろうか?
夫婦愛ってなんだろうか?
色んな視点で考えさせられた渋い一作でした。シーンシーンが引きずるかも。

ぜひ、劇場で御覧ください。
YokoGoto

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