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愛しのアイリーンのピピのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
4.5
最近コンビニ店員がどこも外国人店員さんばかりで、本当に尊敬しております。知らない外国の地で接客の仕事をするって並大抵のことじゃないと思うんです。私だったらチラシ配りとか話さないお仕事しちゃいますよ。(ダメ子)

余談でした。

この作品、内容何も知らずに観ました。
吉田恵輔監督だから、また性格の悪い映画なんだろうな(楽しみだな)と思いながら観ました。

結果、最低で最高の映画でした。

人種問題、人身売買、言語、親子、老老介護、田舎、ヤ〇ザ、金銭、性欲、宗教、結婚、不倫…

こんなにテーマ盛り盛りな映画がありましたでしょうか。

そしてこんなに盛り盛りお腹いっぱいですと、「うるせえよ!」となる私ですが、うるさくなかったです。なんででしょう。

*ここから先ネタバレ。


フィリピン人と日本人。こんな人身売買的に結婚してる現実が存在するなんて知りませんでした。お金はあるしノリで結婚して。結婚相手ってお金で買えるんだなあとグサグサ感じました。まあ人種関係なく、お金で結婚はできるんだろうけど。。

☆アイリーンは母国の家族のためにお金を払ってくれる日本人(岩男)と結婚して、見知らぬ地日本に来たわけです。

家族を養ってくれるなら、お金をくれるなら、誰でもよかった。

しかし周りの日本人はアイリーンを蔑んだ目で見てきます。岩男から買われた身なのに。

☆岩男はとにかく女性を欲していた。四十男がコツコツ貯めた貯金がある。お金ならいくらでも払えた。

できるなら誰でも良かった。俺でも結婚できるんだぞと親たちに知らしめたかった。誰でもよかった。

しかし周りの人々はアイリーンを嫁として認めません。あんな大金払ってるのに。

全てこの対比が物語ってました。
親を愛することが当たり前の世界フィリピンと、親を鬱陶しく感じ姥捨山なるものも存在する日本。もちろん全部が全部そうじゃないけど、この映画の中ではそう描かれてました。



岩男とアイリーンの出会いは超偶然。

岩男が想いを寄せる職場の愛子さんに、もっと早く強引にアタックしていれば…

お見合い相手の琴子ちゃんにもっと早く会っていれば…

でもこの二人の女性ともうまくはいかないことは見え見え。

どうしたって、岩男はフィリピンに行く運命だったのかもしれない。アイリーンに出会う運命だったのかもしれない。

偶然は必然とはまさにこのこと。

岩男のことを段々好きになるアイリーンの初めてのキス。良かった!と心の底から思いました。
岩男と共犯になった後のシーン。なんて切なくて、なんて綺麗なんだろうと思いました。ああいうシーン苦手なのに、この作品だとちゃんと意味を成してるから、好き。

汚い男岩男と純粋な女の子アイリーン。
方言での愛の伝え方が沁みた。
沁みすぎた。

脚本すごいなと思って観てたけど、ラストは画も良かった。

きっとテーマ盛り盛りでもうるさくなかったのは、偶然による必然と、見知らぬ地日本で奮闘するアイリーンが愛しくて美しすぎたから。

(死体がもっとちゃんと作り込まれてたら良かったのに…泣くシーンで笑いました…死体ってあんなもんなのかね…)
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