ケンヤム

愛しのアイリーンのケンヤムのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
4.8
あまり映画を観て泣くことはないし、泣くことを求めて映画を見ることはないのだけれど、泣いてしまった。
それは、どうしようもなくバカな人たちが動いて動いて動きまくる運動そのものに、むき出しの人間性、愚かさ、言い換えるなら人間の業のようなものを見たからだ。
私自身がどうしようもない人間で、不器用で、滑稽だからそういう映画をみると自分が肯定されたような気になる。
自分はどうしようもない人間です。と、このレビューで表明することそのものが、自分がどうしようもない人間であることを自覚しているまともな人間であると他者に認識してほしいというわがままでもあるのだけれど。

この映画に登場する人たちの行動は、いちいち間違っているし、愚かで、滑稽なのだけれど、純粋な行為だ。
主体的で、直線的で、丸出しで、むき出しだ。
私は行為そのものが生み出す結果など、どうでもよくて、人間の純粋で実存的な行為をスクリーンに観たいのだ。
血縁とか愛とか風土とかそういう曖昧な概念に駆り立てられる人間という不思議な生き物の行為を全面的に肯定する。

どんなにどうしようもない人生であったとしても、イワオとアイリーンのファーストキスのような美しい瞬間が、一生のうちに1秒でも訪れることがあるとするならこれから生きて行く価値があるだろうと思った。
あぁ、死にたい。生きたい。
ケンヤム

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