いしすー

来るのいしすーのレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
4.0
前半が相当良かった!世間体ばかり気にして家族とは全く向き合おうとしない夫と、それを耐え忍ぶ妻。この両者のちょっとしたボタンの掛け違いがいくつも丁寧に描かれ、いつ爆発するのかハラハラさせられる。この丁寧さがかなり好きだ。ホラー気分で見にきた人にとってはドラマチックな展開が少なく退屈かもしれないが、実際のところ本作品は化け物よりも複数の人間描写に力点を置いているので、このリアルな時間感覚と湿っぽさが最適解だと思う。心の落ち着かなさは「アイズワイドシャット」でニコール・キッドマンの一挙手一投足を見守っている時の気分に近い。

むしろ大規模な除霊をしだす、後半の小松・岡田パートが微妙だった。いやまんま哭声ですやん…。あっちは田舎、こっちは高級マンションの前でお祓いをおこなうのだがこれがまた陳腐なのだ。もともとグロシーンで急にでんでんぱっしょんを流したり、辛気臭い場所でカエラのbutterflyをブチ込んだり、状況と真逆の演出をしたがる監督なので、新築高級マンション-神主の意外な組み合わせもその一環なのかもしれないが、さすがにバカバカしい。肝心のクライマックスで笑ってしまうから致命的だ。「嫌われ松子の一生」や「告白」ではガツンときたこの手法も今では様式化してしまって、観る方も慣れてきているので、もうちょっと控えめにしたほうが良いんじゃないか…。

とはいえゆったりした展開でも、凝ったアングルやテンポでめちゃくちゃ見入ってしまったので、やはり中島監督はすごいし、今作もおススメです。
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