しの

来るのしののレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
3.2
ホラーでありながらエンターテイメント。
両方兼ね備えた新感覚の映画だった。
師匠シリーズや寺生まれのTさんなど、洒落にならない怖い話が好きだった人には是非観てほしい‼︎

グロシーン:流血や人体切断あり

あらすじ
恋も仕事も順調な秀樹(妻夫木聡)は祖父の十三回忌のために、恋人である香奈(黒木華)を連れて地元へと帰省する。
そこで地元に伝わる怪異「ぼぎわん」とかつて行方不明になった少女のことを思い出す。
少女がいなくなる前に残した言葉は「呼ばれてしもたら逃げられへん。秀樹も呼ばれるで……」
ぼぎわんへの恐怖を抱えながらも、秀樹は香奈と結婚して知紗という子供も授かる。しかしある日、帰宅したマンションはひどく荒らされておりなにかが「来た」ことを予感させる。
ぼぎわんを恐れた秀樹は霊媒師を頼ることに……。


以下感想(ややネタバレ含む)

全体の流れとしては怪異が現れて霊媒師が倒すという簡単なもののはずなのに、そこにいたるまでの人間関係・怪異の正体・除霊の方法など、絡み合う全ての要素が複雑すぎてストーリーの説明が上手くできない。
しかし、その複雑さがこの映画の肝で面白い部分だと感じた。

物語の核となる「ぼぎわん」は人の闇や心の弱さを狙ってやってくる。
主人公の秀樹は仕事も育児もできる完璧なイクメンパパとして育児ブログを更新するが、実際は育児を妻に任せきり。
妻の香奈はそんな秀樹を疎ましく思い、精神が荒れていく。
関係が悪化していく両親と過ごす子供の知紗は……
といった風に人の心の闇や業が鮮明に描かれていく。
彼らがぼぎわんに狙われるのは当然かもしれないが、その闇が妙にリアリティがあり日常にマッチしすぎて恐ろしいのだ。
自分もこんな風に無意識に闇を抱えているのではないか…と考えてしまう。

クライマックスでは全国から総動員した霊媒師がマンションの前でお祓いをするのだが、流派も信仰も関係なくあらゆる力で祓おうとする様子は壮観かつコメディチック。人によっては爆笑シーンだと思う。

ラストもぼぎわんがまた来るんじゃないかという不穏さを残していて、不安な気持ちを抱えたまま映画館を後にした。

キャストさんの演技も本当に素晴らしくて、こういう人いるよな〜と思わせるような馴染み方から動作一つでふとした闇を滲ませてくる。実は一番怖いのは人間なんじゃないかと実感した。

そしてぼぎわんの真の怖さはきっかけがないこと。
呪いや怪異には大抵理由がある。
変なお守りを拾った(物)
神社を荒らした(場所)
呪ってくる誰かがいる(人)
その多くは解決する手立てが明確だ。
しかしぼぎわんは違う。
生活の中に闇を感じたらそこに入り込んでくる。
人が人の痛みを忘れた時、ぼぎわんはやって来るのだ。いつのまにかそこにいて、知らず知らずの内に迫ってくる。
映画のストーリーが上手く説明できないのは、ぼぎわんが来るまでの経緯が順序立てられていないからだ。
いつのまにかいる。それが一番恐ろしい。


教訓じみた映画ではなかったけど、ちゃんと生きよう‼︎と思い直す結果となった…。
これを書いている今でも怖い‼︎‼︎
しの

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