ミノリ

芳華-Youth-のミノリのレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
3.2
予告を見てクラシック感漂う映画と期待して鑑賞。
率直にいえばいただけなかった。物語の主軸の見えなさ(主人公ふたりの物語でもなければ群像劇というわけでもない)、シーンが断片的でシーン間の繋がりが薄いこと、ナレーションに心情や場面を語らせすぎること等、色々思うところがあった。
とりわけ疑問に思ったのは、ヒロインであるはずのシャオピンの描写が深掘りされないことだ。たとえば、彼女が文芸工作団になぜ期待を持って入団したのか(家からの脱出と仲間からの承認)、リウ・フォンへの恋慕の本質的な理由(助けてくれた恩人だけでなく実存的な近しさがあったのではないか)、従軍看護婦としての献身さを駆動する感情的な背景、戦争後の”壊れ”と”再生”の物語(そこに何があったのか?)等々、描くべきことが沢山あるにも関わらず、描いていない(もしくはひどいことにセリフやナレーションで済ませている)。そのあたりが退屈を感じた要因だと思う。
また、物語の出来とは全く別の観点でいえば、中国(人)にとってのベトナム戦争(中越戦争)とは、どんな意味を持っていたのか、を考えさせられた。戦争自体は恐らく大敗し、同時期に鄧小平の市場経済路線も進んだ(映画ではコカコーラの看板が印象的)。本作は主人公と同世代、この頃に青春時代だった中国人(今の60代?)の心を掴んでヒットしたのだと勝手に解釈しているけど、その観点は考えたことがなかったので興味深かった。推測で言えば、これは現在の中国で広がっているという文化大革命への回顧、良き中国としての文革時代への憧れと通底するのだろう。
あと、戦争シーンは、臨場感あるワンカットで中々良かった。意外とグロ描写をはっきり映していた。
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