まぬままおま

穴を掘るのまぬままおまのレビュー・感想・評価

穴を掘る(2017年製作の映画)
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矢川健吾監督作品。

穴を掘るという行為は極めて肉体的な運動であるが、本作はその運動の奥底にある抽象的な意味を描いている。

穴を掘るとは、企業社会で抑圧されている獣性を掘り起こす運動である。

この社会システムを円滑に動かすためには、没個性的に振舞わなければならず、上司や資本の要求通り機械のように働かなければならない。だが私たちは機械ではない。感情を持った人間である。欲望もある。

だから男たちは夜な夜な集団で集まって、穴を掘る闘いをする。そこでは企業社会の序列はない。平等な「男」たちが闘い合う。そしてその闘いは対峙する相手とだけではない。自分自身に対してもだ。肉体的な疲労を伴う闘いを通して、自分の奥底にある衝動、欲望、狂暴さを掘り起こす。

自らの獣性を掘り起こすことは、機械化された私たちを人間にするために必要な儀式なのである。それを儀式的に穴を掘る極めて抽象的な映像イメージで見事に描いているのである。