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ラスト・ムービースターのShinMakitaのレビュー・感想・評価

ラスト・ムービースター(2017年製作の映画)
3.0
1970年代、アクション俳優として「最も稼いだアクター」の座に6年間君臨した大スター、ヴィック・エドワーズ。今や杖無しでは歩けないほど老いさらばえ、ロサンゼルスの屋敷でひっそりと暮らしている。長年連れ添った愛犬の死も看取り、完全に孤独となってしまったある日、一通の手紙が届く。それは国際ナッシュビル映画祭からの招待状だった。なんでも、今年の映画祭でヴィックの主演映画を特集上映し、功労賞を授与したいというのだ。過去に、イーストウッドやデ・ニーロにも功労賞を渡しており、一流ホテル宿泊費と航空チケットも映画祭運営持ちと聞き、行ってみるかと思いたったヴィック。しかしナッシュビルに到着し、彼は自身の大いなる勘違いに愕然とする。ホテルは安モーテル、映画祭の会場は場末のバーの個室で、古い映画をプロジェクターで壁に映す粗末なもの。映画祭の運営はダグとショーンという2人の素人映画オタクだったのだ。騙されたと憤慨し、ロサンゼルスに帰ると息巻くヴィックだったが…


「ラスト・ムービースター」、観てきました。

以下、ラスト・ネタバレスター。


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先日観た「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で、本来言及すべきでありながら名が登場しなかったハリウッドスターが2人います。1人はイーストウッド。ディカプリオ演じるリックのキャリアは間違いなくイーストウッドのパロディなので、敢えて名前を出さなかったのでしょう。もう1人はバート・レイノルズ。リック・ダルトンというキャラのモデルがバートそのものですし、実際、バート・レイノルズ自身がマンソンファミリーが乗っ取る牧場の主人役で出演することになってましたから、バートの名が出ないのは必然でした。

そんなバート・レイノルズが亡くなったのは一年前の昨日。このタイミングで遺作が公開というのも驚きですが、内容が何とも最終主演作に相応しいものでまたビックリでございます。

大スターのヴィック・エドワーズは、まんまバート・レイノルズです。アメフト選手として活躍して、テレビの俳優としてデビュー。意外にもちゃんと演技の勉強をしてから映画に進出するんですが、セックスシンボル的肉体美とアクションが当たったことから、シリアスドラマを避けて派手なスタント映画ばかりに出演、結局時代の波と主演作選びの失敗に押され、忘れられた存在になっていった男。イーストウッドにもなれず、マックイーンのような伝説にもなれず、惨めに生きてきた男。しかし、バカげた貧乏映画祭に招かれたことで、偶然にも自身すら忘れていた過去や後悔を精算する機会に恵まれ、また新たな一歩を踏み出す…この作品は、そんなライフ・ゴーズ・オンな映画なんです。プロットだけ見ればシンプルかつありきたりなんですが、バート・レイノルズに当て書きしているだけでその説得力が究極。このアイデア一点突破で、面白い、いや感動するに決まってますよ。最高でしたねー!ヴィックと行動を共にする女性リルのキャラもとてもチャーミング(ルックスは野呂佳代だな)、「トランザム7000」や「脱出」の自分自身に説教かますアイデアも秀逸。オープニングカット(動物病院待合室の顔アップ)とラストの顔アップの対比演出も素晴らしいです。インスタ描写が浅く、バズる展開が全くないのは残念ですが、そんな欠点よりも感動感涙のほうが勝ります。「シティヒート」以降のキャリアの中で、ブギーナイツと本作、そしてワンハリに出演を決めたことだけは失敗じゃなかったです。バート・レイノルズ、俺たちは絶対にあんたを忘れないぜ!必見!
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