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ペンギン・ハイウェイの爽のレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
4.1
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海から生まれた人間と、人間が自然から作り出した無機物的世界。
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自分の立っている場所を忘れた人間と全てを生み出した恵みある自然の有機的結合。
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人類の繁栄と対照的に住処を奪われたペンギンが人間を生物的根源への回帰へと誘う。
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「お姉さん」という存在は神であり、人間が哲学的に解明できない曖昧さ、世界を超俯瞰的に見守り、導く存在である。
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海が世界の穴であるとはどういうことか。
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作品の中で相対性理論と巾着袋の例えが登場する。
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人間の住む世界がこの広い宇宙であると定義すると、世界の果てはどこにあるのか。
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「果て」という言葉から世界の外側を連想してしまうが、その答えを内側に求める思想こそ相対性理論であり、ブラックホールの存在が客観的事実となった以上もはや仮説ではないと言えよう。
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ブラックホールの存在は世界にどんな事実を突きつけているのか。
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地球に生まれたブラックホールが海である、というこの作品の設定は時間や空間という原理が決して一方向ではなく円環的に結合していると仮定している。
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お姉さんは少年に「会いに来い」と言い残す。
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この地球を青い惑星たらしめ、生物を生み出した大いなる海と神の関係性とは。
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少年が世界存在の根拠を解明した時、人類は自然との二項対立的構図を克服できるのかもしれない。
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かなり難解なSFがファンタジー仕立ての演出によって大人から子供まで楽しめる丸い作品になっています。
爽