ひへいこう

恋愛依存症の女のひへいこうのレビュー・感想・評価

恋愛依存症の女(2018年製作の映画)
4.5
2017年12月の渋谷ユーロスペースでの先行上映を観た感想です。(2018年5月12, 17, 18に池袋シネマ・ロサで観た感想も追加しました)

199分あるから、モーゼが海を割ったり、山を越えてナチスから逃げるのかと思いきや、そこには人生のどこかで出会ったことのあるような人々がたくさんいました。私はひとりひとりのエピソードがこんなに十分、描写されている群像劇は観たことがなく、結局どのキャラクターにも愛着が湧いてしまいました。こいつほんとにクズだなと最初思っていた山谷さん演ずる鏑木さんも、最後にはなんとなく感情移入していたり、五反田くんが、、、のシーンでは正直「えっ」って声を出してしまったり。(周りの方すみません)

いくつもネタが仕込まれていて、それが最後で一気に爆発する感じがとても痛快で、いいラブコメだなと思います。最後のシーン観るためにここまでの3時間があったんだ!と思えたし、ああ、この199分は必要な尺だったんだなと納得が行きました。

ひらくさん演ずるニコの表情の変化がとても愛らしく、一方、サエとの対比でとても不思議な魅力を持った俳優さんだなと思いました。ニコとももさんの会話のシーンには何度も吹き出しました。

他の観客の方々と一緒に声出して笑ったのは初めてでなんだか新鮮な気持ちがしました。

【追記】2018年5月12日池袋シネマ・ロサでの上映初日を観て

面白いと分かってて2回目観るのはとてもリラックスすると共に前回気づけなかったこととか想いとかたくさんあっていい映画体験でした。前回よりずっと盛り上がって、会場全体で大笑いしてたのが印象的。

1度目はやはりほぼ100%ニコの恋心に感情移入してしまっていたけれど、2度目は鏑木さんとサエの会話が妙に刺さったり、アリスが五反田くんに向ける兄妹愛の美しさにほろりと来そうになったり、店長の気持ちに共感したり、、、あれ?これ同じ脚本ですよね?と思うくらいガラリと違った観方ができました。

店長役の品田さんの抑えつつ、どこか剽軽な演技がキャラクターに合っていて素晴らしい俳優さんだなと思いました。

クライマックスに向けて、いきなりテンポを上げる起点となる、ももさんがニコにセーラー服と台本を渡すシーン。ここでセーラー服というのがひとつの象徴なのかなって思いました。ニコとサエがひとつになる。物語を纏うことで人は自らを変えられるというメッセージなのかなと。纏いつつも語られるのがニコ自身の言葉だったことが何より素敵で。いや、これは勝手な深読みかも知れません。

でも、それだけおもちゃ箱のようにたくさんの魅力的なエピソードが詰まっていて、まだまだ気付いてない仕掛け、木村監督ワールドがたくさんあるのだろうなと思いました。

木村監督といえば、鏑木さんが最初、酔っ払って吐いてるシーンと、ニコが夜道で一人妄想会話してるシーン(僕はこのシーンが1番お気に入りです!)の2つに通行人役で出てましたね。

この映画で日本映画っていいものたくさんあるんだと知りました。他にも色々観てみたいなと思えるようになりました。だから、携わった人ひとりひとりに感謝したいです。また観に行きたいと思います。

【追記】2018年5月17, 18日池袋シネマ・ロサで観ての感想

アリスは最初からえびちゃんのことが実は好きなのかな?という百合設定感ある描写を踏まえての兄妹愛描かれるシーン。

メインストーリーから比べるとあんまし目立たないキャラなんだけど、この子は関わる人誰もをたいせつにできるいい子なんじゃないか説が浮上。

などなど観れば観るほど、語られていない細かな人間のストーリーが浮かんでくるのがいい。続編欲しいですね。。。

回を重ねる毎に感じ入るのは、山谷さん演ずる鏑木さんはどこまでいっても鏑木なのに、ひらくさん演ずるニコは場面場面で声のトーンであるとか表情とか変化が大きい。まさに静と動の対比みたいなのが面白いなーって思いました。

たとえば、恋してる時のニコの声のトーンが、店長さんにフラれてしかもえびちゃんがヘルプに入ってきたシーンのトーン、百川さんから電話がかかってきた時の返事のトーン、と段階的に下がって、クライマックスで弾ける。この使い分けがすごく良くて。サエの演技もそうだけど。

これに対し、鏑木さんはどこまでも本気なのかどうなのかよくわからない飄々とした感じ。でも、チー坊を抱きしめた時だけは心が出てたと思う。

そういうひとりひとりの俳優の個性がこの映画の魅力なんだよなってつくづく思い知らされました。またしばらくたって観たら新たな発見があると思うので、再上映してほしいと思います。
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