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LA 92のmimuneのレビュー・感想・評価

LA 92(2017年製作の映画)
4.1
1992年のロス暴動のこと全然知らんかった。
hollywoodのサインがすぐそばに見えるダウンタウンが戦場みたいになってた。

全てはロドニーキング事件が始まり。
白人警官による無抵抗黒人ロドニーキングへの殴打事件があり、証拠動画があったにも関わらず白人陪審員達によって警官はみな無罪。
また韓国系アメリカ人の商店店主が黒人少女ラターシャハーリンズを万引きと思い込んで撃ち殺した事件でも、白人裁判官によって社会奉仕活動と罰金だけで済まされたことから、黒人たちの暴動が起きる。
溜まりに溜まった黒人達の怒りが大爆発し、街中のアジア系商店、また黒人経営の店までもが無差別に放火され略奪され、交差点に通りがかった白人アジア人が車から引き摺り下ろされリンチされていくのを見ていて、do the right thingを思い出した。
暴動はもちろん許されない。
でもそうなってしまったのは、あの暴動が起きたのには充分すぎるほどの理由が、あまりにも耐えられない痛みや苦しみや怒りや悲しみがある。
しかし、黒人少女を撃ち殺した店主にも、それまでに黒人の少年少女によく万引きされてたという背景がある。
その黒人少年少女が万引きしたのにも、人種差別社会のシステムによって貧困のループから抜け出せないゆえに万引きしてしまうという背景がある。
なんの痛みも背景もない、ただの暴力をしてるのは白人警官だけ。

放火と略奪で荒れ続ける暴動のさなか、店を荒らそうと入口に群がる大勢の黒人に、毅然とTHIS IS AMERICA! GET OUT!と叫び続けて店を守り切った、パジャマ姿のチャイニーズアメリカンのおばあちゃんがかっこよすぎた。

あとでロサンゼルス暴動についてのwikiを読んだら、更に衝撃的かつカオスすぎて虚しさしかなかった。
以下、wiki引用。
"韓国系アメリカ人の店が襲撃されやすかったのは、単に黒人が多く住むエリアで最も成功した目立つ店舗だったから"
"実際に襲撃を行って逮捕された黒人たちへの聞き取りでも、韓国系アメリカ人そのものへの憎悪・反感はほとんど見られなかった"
"また韓国系アメリカ人の店に限らず、黒人・プエルトリコ系・ラテン系など様々な人種の経営する店も無差別に略奪・破壊の対象となっている上、店舗を略奪した者のうち相当数は中国人や日本人、フィリピン人などの店を襲ったと信じていた。"

交差点を封鎖して通行車に物を投げつけてた黒人が、"白人はぶっ殺せ!"と叫んでたり、
暴動をやめろとデモする韓国人の1人が"略奪をやめろ、悪いのは白人だ!"と書いたプラカードを持ってて、ああ、でもそうじゃないんだよな、それじゃだめなんだよな、とも思った。
悪いのは"人種差別をする"ことであり、その人種差別の上に成り立ってる社会システム。
白人だから黒人だからアジア人だから、と言ってる段階では何も根本的に解決できない。


この映画を見てるとき、少し映像に酔って休憩挟んだんだけど、そのときツイッターを開いたら"アメリカでコロナウィルスによるアジア人ヘイト、LAリトルトーキョーの寺に放火"というニュースが目に飛び込んできて、ああ、本当に何も変わってないんだなと。


"この暴動はいつまで続くと思う?"
"いつまでも終わらないと思うよ"

黒人のおじさんが言うとおりなのかもしれない。


ちなみに、暴動収束後にロドニーキング事件は再調査されたが、殴打した警官4人のうち有罪になったのは2人だけだそう。
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