けーはち

Papers, Please: The Short Film(原題)のけーはちのレビュー・感想・評価

3.5
同名人気インディーゲームの映像化作品。原作は80年代の架空の共産主義国家の官吏になって入国希望者の書類の不備や不審な点を調べあげ入国可否を決める淡々とした作業ゲームなのだが、監視社会の厳粛な空気と複雑な人間模様で、職務に徹するか情をかけるか、崩壊迫る社会で自らも家族を連れて亡命するか、反体制派のテロに加担するか、など思考しがいのある濃厚なゲーム体験で何度も違う結末を見たくなる。本作は11分の短編で、張り詰めた空気と機械的な作業、人情の機微など原作の醍醐味を如実に伝えるが、唐突に驚愕の結末……未熟なプレイヤーのミスによるデッドエンドの再現、本作舞台のディストピア社会の不条理さをも味あわせてくれる良好な映像化。テーマ曲も、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」第2組曲「モンタギュー家とキャピュレット家」を思わせるコミカルな厳粛さで良い。