タナカリオ

コーヒーが冷めないうちにのタナカリオのレビュー・感想・評価

コーヒーが冷めないうちに(2018年製作の映画)
3.6
「喫茶店」という舞台映えする設定に、エプロンの似合う有村架純がコーヒーを淹れている姿だけで既に1本の映画が成り立っている…と思ってしまうほど、画面だけでも楽しめる。

「あなたが戻りたい過去はいつですか?」と言うように、よくある「時間を遡る」設定の話である。この設定はどんな話にしても感動を作りやすいので、正直飽きていたところだが、この話の良いところは「過去に戻っても過去は変えられない」というルールがあることである。

どの人物たちも、過去に戻るが、過去を変えるのではなく、「未来を変える」決心をして、これからを歩み出す。未来を変える、ということは、「今」を変えることでもある。その前向きさが快い。

何と言っても良いのが夫婦を演じる松重豊と薬師丸ひろ子の「存在」である。もはやストーリー関係なしに、この二人が画面に存在するだけでぎゅっと心が締め付けられて涙腺に響いた。この二人が、これからも「夫婦」として生活していけるように…

残念だったのは、「4回泣けます」というコピー。
本当に4回泣けても、「本当に4回泣けた」で終わってしまうし、おそらく殆どの人が「4回も泣けなかった」という感想になってしまっているのではないか。泣ける映画には違いないのだが、作品側から泣くことを前提にしてしまうと、「期待以上」という感動を観客から奪ってしまうのではないかと思った。

物語のカラクリはある程度は予想できるように随所にヒントが忍ばせてあるのだが、最後の核心の部分は予想できなく、スッキリした。
観終わった後は、自分も「どの過去に戻りたいか」を考える。
すると、少し未来の向き方が変わる。
今は、変えられる。
コーヒーが冷めないうちの、わずかな時間でも。
タナカリオ

タナカリオ