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コーヒーが冷めないうちにのSoのレビュー・感想・評価

コーヒーが冷めないうちに(2018年製作の映画)
3.2
ある一定のルール下で、コーヒーが熱を持っている間だけ時間を行き来できるというタイムトラベル映画。

主人公、時田数(有村架純)とその母(石田ゆり子)との母娘に秘められた親子のストーリーと、カズに寄り添う恋人、亮介(伊藤健太郎)とのラブストーリーをうまく絡めた心温まる作品です。

実質的な舞台はほぼすべて喫茶店の中だけで起こるのですが、過去を体験する①波瑠×林遣都、②松重豊×薬師丸ひろ子、③吉田羊×松本若菜の三者三様のサイドストーリーがとても良くできていて、それぞれの人物の「触りたくて触れなかったもの」にちょっと手が届く瞬間の肌触りがうまく表現されていたように思いました。

例えば学生時代に大好きで仕方なかった人に渡せずに終わったラブレター。渡したところでフラれて終わってその彼女との関係は何も変わらなかったとしても、もし渡していればその後を生きる自分の心持ちが少し変わっていただろうこと。次に出逢った人には勇気を出して思いを告げられたかもしれないこと。そんなありきたりだけど、ついつい同じことを繰り返しがちな人生の苦さを、優しく突つくようなメッセージが込められています。

コーヒーのあのほろ苦いふくよかな香りと味。
そして熱いうちと冷めた後のあの存在感の大きな違い。
コーヒーだけが持ち得るイメージを上手に作品の中に「淹れた」、気持ちのいい映画でした。
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