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ラのおっとのレビュー・感想・評価

(2018年製作の映画)
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バンドの青春群像劇かと思ってたけど全然違った。
先の見えない作品で、人生そのものだと感じた。
スクリーンに映し出されている「偽物」が「本物」のように感じられて、実際に起きている事なのではないかと思わせられる。
出てくるメインのキャラクターにはみんなイライラさせられるけど、実はその歯車の狂った中に全員が愛を持って生きていて、どこからそれが狂い出したのか考えさせられた。
作品の120分で埋まりきらない彼らの人生が感じられる、本当に素敵な作品だった。
それはもちろん役を「実像」にするために入念に準備されたリハーサルの成果でもあるし、役者を信じて作り上げた監督やスタッフの方々、若いキャストを支えている役者の方などたくさんの方の「愛」でできたものだと思う。
いい芝居の正解は正直まだよくわかってないけど、この作品における「芝居」は最高の芝居。
素敵でした。

脚本における伏線が分かりやすくて、何気ない一言や行動がすべて繋がって、積み重なって人生ができているのだと感じ取れた。
ケンカのシーンや検査薬のホラーシーン(違うけど)では結構な長回しのシーンが多くて、芝居の集中力が会話の中で途切れないのは役者さんそれぞれの役への没入だなと。役づくりのアプローチをリハーサルによって皆さん統一されているので、そこにいる「人間」を演じることができる。
なにを言うか、なにをするか、計算ではなく「生きて」演じることができる。
日本人が演じているのを見ると「こう動くんだ…」って気になっちゃって集中できなかったりするけど、この作品は真似しようにもできない「役者」としての動きをしているのでただただ作品に集中できた。
すごい。


また自分が音楽をやっていて、カメラもやっていて(とにかくこの作品は映像がきれい)、、、と自分の中で作品の内容や作り方など、共感点の多い作品だったのでたくさんの部分に刺激を受けた。
ウズウズする。
芸術に関わる全ての人がどこかで刺激を受ける作品だと思うので見てほしい…

先の見えない一回目と、展開が分かっている二回目以降では感じるものが全く違う映画だと思う。
繰り返し何度も何度も、映画館で見たい。そんな素敵な作品に出会えた。
大切にしたい作品です。
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