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この道の62355cinema5のレビュー・感想・評価

この道(2018年製作の映画)
3.5

劇場 No 175

北九州の名画座 昭和館で
創る者の生きざま2本立て...
「止められるか、俺たちを」との併映

詩人としての才に恵まれながらも自堕落な生活を送る北原白秋
彼は隣家の人妻と不倫をしたため姦通罪で収監されるが、与謝野鉄幹の援助を受けて出所
そんな彼に、児童文学誌「赤い鳥」を発刊した鈴木三重吉が、作曲家・山田耕筰と組んで童謡を創るようにと依頼するが...

自由奔放な詩人と生真面目な作曲家が織りなすハーモニー🎶
最初、退屈な偉人伝かと思って鑑賞を躊躇したのですが、引き込まれて観てしまいました

あくまでも、主演は二人ということですが、これは完全に北原白秋物語
与謝野鉄幹が「リズムがあり躍動感がある」と絶賛するほどの時代の寵児であったのですが、酒浸りの日々を送ったり姦通罪に問われたり...と破天荒ぶりが際立つ困った方だったようで...

でも、山田耕筰との出会いが少しづつ彼の創作への意識を変えていきます
二人のファーストコンタクトは散々なものだったのですが、関東大震災を経てから、彼らの絆の深まりが名曲を生み出していく原動力になるのです

思えば、山田耕筰は日本語の高低アクセントを大切にして作曲される方だったので、白秋のリズムがある詩が曲にのれば、鬼に金棒...
助詞の一つひとつの音に意味を込めようとした山田の熱意が、白秋と一緒に名曲「からたちの花」を生み出させたでしょう

また、与謝野鉄幹・晶子夫婦との親交、萩原朔太郎、室生犀星、石川啄木、高村光太郎たちの好意も大きかったみたいです

そして時を経て 日本が戦争へと向かう状況下のもと、軍歌を創作するように命じられる二人...
与謝野晶子が、戦地へと向かう息子たちに詠んだ詩とともに思うところがありました

最近観た「アルキメデスの大戦」での数学と同じように、学問や文学が自由を奪われる世界...二度とそんな世界にしてはいけないという思いが頭をよぎりました

劇場で観ることが出来て良かったと思う作品です
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