ぶぶこ

ザ・ビッグハウスのぶぶこのレビュー・感想・評価

ザ・ビッグハウス(2018年製作の映画)
4.0
ゼミの先輩である想田和弘さんの映画「The Big House」を京都シネマで鑑賞。第一印象は、これまでの想田さんの映画で一番「すっと鑑賞できた」というもの。一言で言えば「分かりやすい問題提起」が見えづらかったせいだろう。実はこの映画は目をこらさねばならないものだと思う。
この映画では繰り返し「宗教」のシーンが出て来る。スタジアムの外で「悔い改めよ」と声を張り上げる人(複数)、静かにチラシを配ろうとするエホヴァの証人、冒頭の方では「ハレークリシュナ教団」らしき姿も見えたし、そして掃除をするスタッフたちのカトリックのミサまであった。こういうのに目が行くのは僕と想田さんが宗教学科出身だから仕方ないと言えるが、何故彼らはスタジアム(の外)に来るのか。それは、単に人の多いところで布教しようという功利的な考えだけではなく、このスタジアムがまさにアメリカの俗なる部分の集合体であるからだろう。まさにThis is America.
この映画ではアメフトの試合自体は後景に退き(選手や監督も出て来るが、一挿話の域を出ない)、スタジアムの熱狂から一歩引いた裏方の人びとが中心となる。このようなクールな視点は、過去のプロパガンダ映画からはもちろんほど遠く、僕には市川崑の「東京オリンピック」の禁欲さを彷彿させた。
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