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ライトハウスのYOUのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.7
ロバート・エガースが監督・共同脚本を務めた、2021年公開のダークスリラー。
ニューイングランド沖の孤島を舞台に2人の灯台守が反発を繰り返すうちに錯乱状態に陥っていく様子を描いた本作は、1801年にウェールズ南西部ペンブルックシャーで実際に起こった不可解な事件「スモールズ灯台の悲劇」を基にしているそうです。本作最大の特徴といえばやはり「35mmのモノクロフィルム撮影」と「スタンダードサイズよりも更に正方形に近い1:1.19というアスペクト比」です。エガース監督の前作『ウィッチ』でも全体にグレイッシュな色調や1:1.66の画面サイズが用いられていましたが、本作はその傾向が研ぎ澄まされている分より奇抜で独創的な印象を受けます。また前作から引き続いてのシンメトリックな構図も今回はキューブリック級に多用されていますが、これも今回のアスペクト比が更に効果的に作用させています。他にも人物の顔がやたらドアップで映されたり、激しく打ちつける大波や灯台の霧笛の音が大音量で鳴り響いたりと、とにかく作品全体に尋常じゃない程の圧迫感や威圧感が漂っており、まさに劇中の主人公同様「逃げ場の無い牢獄へと放り込まれるような感覚」を追体験させられているようでした。そして『ウィッチ』とは物語的にも完全に通底するものがあり、もはやエガース監督が作品を手掛ける上でのひとつのテーマだと言えるかもしれません。この2作は共通して「外界から完全に遮断された特殊な環境で生活することになった人間たちが、その土地に伝わる迷信や伝説により精神を崩壊させられていく」という物語であり、”罪”や”虚偽”の渦巻く絶望的なカオス状況からは図らずもシュールな笑いすら込み上がってきてしまいます。今回に至っては途中何度も「自分は一体何を見せられているんだ」という感情にもなりましたし、かと思えば心底悍ましいカットが突然挟み込まれたりもするので、自分はエンドクレジットに突入した瞬間にどっと疲れが出ました。重厚かつ凄烈に描かれる文字通りの”極限状態”はやはり同じく完全に暗闇で閉鎖された空間=「映画館」での鑑賞が本作を楽しむ最善の方法だと思いますし、とにかく”異様な映画体験”になることだけは間違いない!

また『ウィッチ』とのもう一つ大きな共通項として、本作は立派な「動物怖いよ映画」でもあります。特に今回はそれが最も分かりやすい結果として表れますし、エガース監督作はそうした迷信や神話からの引用が顕著な為、鑑賞後はその引用元に関しても深掘りしたくなってしまいます。そしてやはり今回も主演2人の力強い怪演には終始圧倒されました。特にウィレム・デフォー演じるトーマス・ウェイクの絵に描いたような”ツンデレ”っぷりや、本当に何を考えてるのか分からない不気味さには破壊的なインパクトがあります。彼らの凄まじい怪演からはあの部屋の湿気や汗臭さまでこちらに伝わってくるようでしたし、こうして”役者の美味しい部分を最大限引き出せる監督”という意味でもエガース監督の演出には毎回興味を惹かれます。更に言うならば彼の監督作に通底する「アーティスティックな作家性」と「役者の力量を活かした演出」って、もの凄く今のA24の魅力とも重なる部分ですよね。彼はA24のクリエイターとしても今後更に注目されていく存在だと思いますし、自分もその都度リアルタイムで彼の監督作を追っていきたいです。狂気と幻想に満ちた超エクストリームな109分!






















































































































































































ちょっと前にYouTubeで「【ミルクボーイ】差入を全部舞台に集めてみた」という動画を見てめちゃくちゃツボったのですが、そんな感じでエガース作品に出てきた動物をアッセンブルさせる動画をいずれ誰かに作って欲しい。
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