強いかな

ライトハウスの強いかなのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
4.9
久ッッ々に心の底からでっかい溜め息がでるほどの傑作!!私のA24史上最恐であり最高の逸品だった。

草以外に喰うものもない閉鎖された孤島での4週間の灯台守として互いに素性も知らない先輩爺と若僧が二人共同生活をしながら働く。
派遣され次第、爺にメチャクチャにいびられ灯りも任せて貰えず雑用ばかりさせられる日々にフラストレーションを溜めてゆく若いの。

前フリのやや長い感じは否め無いものの、それも嵐の前の静けさである。
最終日についつい浮かれて飲み過ぎたのが運のツキ。
ありきたりな物語だが、溜まりに溜まった苛立ちが、白波が立つように泡立って現実と虚像が混ざり狂う。

八つ当たりと自慰と妄想虚構極限状態。
痛みや不安に一番効くのは酒。
一度解禁してしまえばヤケクソで飲み更けりIQ5くらいの喧嘩をし(これの悪口センスがまた最高である)、抱き合い、歌い躍り、妄想に駆られ、パニックを起こして、疑心暗鬼に陥る。
タコや海藻の舞躍り、である。
いよいよ在庫が尽きれば激ヤバ酒でゲラゲラ笑いながら大の男が二人で机の下に潜る、窓が割れモノクロなのに激臭がするようなこれ以上ない劣悪環境。もう救いなんて微塵もない。アイデンティティの崩壊。

が、男の子って幾つになってもオシッコは的を狙いたくなるのか……等とついつい笑った瞬間に、畳み掛けるように水浸しで火を探しながら「この世に正義は残ってないのか~」と言い出す爺に大爆笑させられる。

勿論、この映画に笑う隙なんて無いのだけど、余裕が無さすぎる大人ほど滑稽なものもないよな。
いよいよ駄目になると口から出てくる悪口は「屁ばっかりこきやがって!」まで落ちぶるのだから。

狭アスペクト比の黒白画面に、水と光と闇とぬめりと吐瀉物が満ちて、奥行感が半端なく質感を肌で感じられる気持ち悪さ。
欲の成れの果ては目が潰れ、肉体が潰れ、啄まれる。取り返しのつかないレイプ。まるで「鶴の恩返し」である。

ラストまで抜群の救いの無さと映像の面白さ、美しさが揺蕩う。たった二人きりで始まり終わる会話劇の面白さは忘れられない、今年観たなかでもトップクラスに観入ってしまった。臭いがする映画は久しぶり。