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フェイ・グリムのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

フェイ・グリム(2006年製作の映画)
2.7
【びっくり続編】
クラウドファンディングで入手した『ヘンリー・フール』三部作DVD-BOX二作目を観てみた。結局何者か分からず空港を去ったヘンリー・フール。彼のその後に迫る話らしいが果たして…

☆『フェイ・グリム』あらすじ
ヘンリー・フールは去り、サイモンは刑務所。すっかりシングル・マザー同然の生活を送る羽目になったフェイ・グリムは、学校に呼び出され息子のネッドが猥褻物を構内に持ち込んだと先生から苦情を受けたり、サイモンの詩集が絶版になりそうで頼みの印税が入らなくなりそうになったりと散々な目に遭っている。そんな中、ヘンリー・フールが生きているという情報を聞く。しかも何故か、CIAが追っていて…

☆なんちゅう続編だ!
ハル・ハートリーの作品はどれも狭いコミュニティの物語を描いているのだが、本作は彼のフィルモグラフィー史上珍しい世界規模の壮大な物語だ。そして、スランプ期に作られた作品故か非常にトリッキーな実験映画となっている。まず度肝を抜かれるのは、劇中9割が斜めから撮られたショットで構成されているのだ。通常、斜めから撮られるショットは登場人物の心の不安を表したり、不条理世界を強調するために使われる。なので、ピンポイントでしか使われないような手法だ。しかし、ハル・ハートリーは自身の心の不安を映画にぶちまけたいのか?あるいは『ヘンリー・フール』で作り上げた世界観を破壊したいのか、ほとんどのシーンでこの斜めショットが使われるのだ。

いきなり開かれるシュールな世界に困惑した。そして、その困惑はビッグバンのように広がる。なんと前作を幹として、次々と後出しジャンケン方式で、「実は…」と物語が肉付けされて行くのだ。前作で、結局正体不明だったヘンリー・フール。彼が実はCIAに狙われている凄腕スパイだとわかってくる。これはひょっとしてハル・ハートリー、『華麗なるギャツビー』をやろうとしているのでは?と思う。そして、前作とは、いやハル・ハートリーを知るものにはあまりにも予想を超えたスパイ映画と変貌を遂げる。

では、期待はずれだったのか?ブンブンはそうだとは思わない。続編というしがらみを破壊して自由気ままに作品を撮る。ヒューマンドラマ、ミステリー、スパイアクションとジャンルの垣根を飛び越えて作品を作るハル・ハートリーの度胸。苦悩の末生み出されたこの怪物に惹き込まれたのは間違いない。

さて、最終章『ネッド・ライフル』ではどのような姿を魅せてくれるのだろうか?
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