Jeffrey

ピラニアのJeffreyのレビュー・感想・評価

ピラニア(1978年製作の映画)
3.0
「ピラニア」

本作は1978年にジョー・ダンテが監督したパニック映画で、この度BDにて再鑑賞したが元祖ピラニア映画である。やはりスピルバーグの大傑作「ジョーズ」の便乗映画には変わりないが、これはこれでコアなファンが多くいる怪作である。製作総指揮にロジャー・コーマンがいるのも注目のポイントで、低予算ながらもロブ・ボッティン、フィル・ティペット、ボブ・ショート、クリス・ウェイラスと言う当時活躍し始めたばかりの、新進のSFXアーティストが多数参加しているのも良い。一応ジェームズ・キャメロンのデビュー作である「殺人魚フライングキラー」はこの映画の続編となっている。後にアレクサンドル・アジャ監督が「ピラニア3D」でリメイクしている。

さて、物語は行方不明となったカップルを探すため、案内人グローガンを雇ってテキサスの山中に入る女性調査員マギー。だが立ち入り禁止区域の施設に侵入した際、誤ってプールの方水バルブを開けてしまった。その中には、本来あるはずのない獰猛な肉食魚ピラニアが大量に繁殖していたのだ。しかもそのピラニアには重大な秘密が隠されていた…と簡単に説明するとこんな感じで、生物パニック映画の中でも金字塔とされており、大襲来、肉食殺人魚の異名を持つ映画である。やはり1970年代は動物パニックのブームは強烈だったな。「ジョーズ」の巨大とは変わって小物類が人を襲うと言う新しい発想展開が新鮮で、群れで襲われたら四方八方から牙が襲う分、逃げ場もなく痛みも倍増する。蟲(昆虫)なら「燃える昆虫軍団」、鴉なら「鳥」、蛸なら「テンタクルズ」だし、鼠なら「ウィラード」「ベン」、熊なら「グリズリー」、ゴカイなら「スクワーム」、鯱なら「オルカ」、蜂なら「スウォーム」、蜘蛛なら「ジャイアント・スパイダー」など多く存在した時代に「ピラニア」が誕生したのだ。

やはりセイルズの手がけた脚本が面白い。画期的なところを言うと、この映画には悪役のキャラクターが出てくるが、本質をつけば登場人物いわゆる主人公たちが圧倒的に悪いのだ。それを忘れずにこの映画を見ると違った面で楽しめるはず。だから映画を見ているとピラニアが圧倒的に悪いと感じないのもその演出の1つだ。いつだって命を奪うのは……。そもそも監督のダンテはこの作品が単独デビュー作になり、実質ノーギャラでやっていて、作品が完成するか不安だったそうだ。「ゴジラ」にもあったスタンスがこの映画にはあり、新生物が人間を襲う理由は果たしてどこにあるのかと考えさせられる。それに監督はSF物も好きで、随所にそういった関連する要素も含めているためファンサービスが多いなと思う。

そういえばスピルバーグのサメ映画の「ジョーズ」に似ていて、パクリ映画だとユニバーサルが裁判を起こそうとしていたが、スピルバーグが本作を見てパクリではないと言ったそうで、無事にお許しがいただけたそうだ。それだけではなく、スピルバーグがこの作品が非常に優れていて気に入ったようで、監督に「グレムリン」をの話を与えたのだ。これでダンテは「グレムリン」を撮ることになる。きっとスピルバーグは映画オタクで、オタク同士の気持ちが伝わったんじゃないだろうか。じゃなければ、こんな…お墨付きを与えないだろう。とのことで久々に見たけどこの古臭さがとても良い。少しばかりチープだけど、一生懸命観客を楽しませようとする意気込みが伝わってくる。まさに映画愛を感じる1本だ。
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