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シックス・バルーンのとぽとぽのレビュー・感想・評価

シックス・バルーン(2018年製作の映画)
3.5
優しさを手放して自分の人生を生きる時。一種訣別、ボートから降りればいい。
「ボートは桟橋の先にあります、けど乗るかは自分で決められます」ーーーー彼女は、彼氏のサプライズパーティーの夜にヘロイン中毒の弟と姪に当たるその娘を乗せて望まざるドライブをする。そして"章"を重ねるにつれて水中の闇に沈んでいくーーーー単に一家・一族の厄介者という有りがちシチュエーションじゃなく、それがヘロイン="麻薬(ドラッグ)"だからこそ意味があるし、きっとそこに本作の作家性的野心や本意・メッセージ=製作意図がかくも的確に横たわっている。だからタイトルやサムネイル等から単にお洒落映画だと思った人は痛い目見ればいい。おぼろげに優しく射し込む光が、作り手の温かな眼差しとそれ以上に現実を見据えたシビアな観察に満ちているようで、ここでは例え神経を逆撫でするほどツラくとも束の間の幸せだろうとも暫しゆっくりと悠久の時が流れているみたい。見事な撮影と編集の中、主人公アビ・ジェイコブソンの葛藤する素晴らしい演技とジャンキーという難役に挑むデイヴ・フランコが太陽のように輝く純粋無垢な姪役の少女と共に剥き出しのドラマを紡ぐ。どこか夜の街行く光たちも所在無さげで、まるで詩的・私的で映像的で何より向かう先を感じさせて憂いを帯びている。誰かのためばかりじゃなく両者にとって甘えからの卒業、これで最後だって感覚。

「どっちに行く?」"Shit hall"
「使った後は返せるかしら?」
「文句を言うな、耐えろ、大人になれ」
「今度は大丈夫」
「彼には誰も何もできない」「弟を見放せと?」
「いつか失うぞ、本当に大事なものを」「今こそ手放すのです」"Now, let go."
TOMATOMETER88 AUDIENCE53
Critic Consensus: Delicately sketched but thematically rich, 6 Balloons rises on Abbi Jacobson's gripping performance -- and marks writer-director Marja-Lewis Ryan as a talent to watch.
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