ほのか

八つのほのかのレビュー・感想・評価

八つ(2016年製作の映画)
4.0
強迫性障害。8に囚われた女性のある朝。
この病気の恐ろしさとは、誰も真に理解ができないことだと思った。彼女自身も何でこんなに"しなければならない"に囚われてるのかわかっていない。ただただその義務で埋め尽くされてしまっているようだった。

彼女の中には"しなくてもいい"とわかっている感情もある。相反するふたつの感情がキリキリと彼女を締め付ける。理解することをやめた家族が拍車をかける。

正直見た目だけでは理解するのに時間がかかると思った。真摯に向き合うのは相当根気がいるんだろう。異常だ、で括ってしまう方がきっとずっと易い。それが映画になると、彼女に音がのる。途端に観てる側まで急いた気持ちになって息苦しくなる。長回しで、彼女をひたすらに追い続けるから、音楽が唯一の映画らしさがだった。彼女自身を強調するものであり、目に見えないものの表現としてとても素晴らしかった。彼女が迫られている影が自分にも迫ってくるような立体感を映画にもたらしていた。

私が観たのは彼女の人生の中のたった81分。
終わりがあってよかった。この病気と戦いながら終わりのみえない毎日を過ごすことを考えることが1番辛い。