かたゆき

告白小説、その結末のかたゆきのレビュー・感想・評価

告白小説、その結末(2017年製作の映画)
3.0
世界的なベストセラー作家にして二児の母でもあるデルフィーヌ。
多くのファンを持つ彼女だったが、その私生活はとても順風満帆とは言い難いものだった。
独立した二人の子供たちとは疎遠になり、テレビ司会者として名を馳せる夫とも現在別居中、新作小説も深刻なスランプからまだ一行も書き出せない状態が何日も続いていた。
独り暮らしをしているアパートに届くのは、差出人不明の脅迫状ばかり…。
八方塞がりのそんなある日、デルフィーヌは〝エル(彼女)〟と名乗る謎めいた美しい女性と出会う。
長年のファンで自分も文筆業だという彼女と意気投合したデルフィーヌは、次第に彼女に心を開き始めるのだった。
行くところがないという彼女を自宅へと招き入れ、ともに暮らしはじめるようになるデルフィーヌ。
すると、エルは少しずつデルフィーヌの私生活に干渉しはじめ、新作小説の内容に口を出すばかりか、仕事や友人との交友関係までもコントロールするようになり…。
孤独な女流作家と謎めいた美しい女性との危うげな関係をミステリアスに描き出す心理サスペンス。

名匠ロマン・ポランスキーの円熟の才が随所に感じられる本作、確かに安定感は抜群でした。
謎が謎を呼ぶモダンで怪しげな雰囲気はいかにも彼らしく、しっとりした美しい映像と音楽も観客の不安感を煽るのに成功しています。
主役であるデルフィーヌを演じたエマニュエル・セリエのいかにもくたびれた女性作家然とした佇まいももちろん良かったのですが、エル役を演じたエヴァ・グリーンの美しさは特筆に値します。
サディズム・マゾヒズムを髣髴とさせるこの二人のいびつな関係性はどことなく淫靡で凄く良かったです。

ただ、肝心のストーリーの方は正直どうなんでしょう。
はっきり言ってしまうと本作はいわゆる〇〇オチのお話なのですが、物語の中盤くらいにはそのことがほぼ分かってしまうのです。
きっと意図してそういう演出がなされていると思うのですが、その趣旨がいまいち分かりづらい。
女性作家の母親を巡る過去のトラウマとの決別、フィクションと現実との境界線を巡る創造者の葛藤、エルの本当の正体を巡るサイコ・サスペンス…、最後までその焦点がぼやけてしまっているような印象を僕は持ってしまいました。
全編を覆うミステリアスな雰囲気は良かっただけに、惜しい。
かたゆき

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