自分の母親を題材にした私小説がベストセラーになった作家デルフィーヌの前に突如現れたエルという名の女性。匿名の手紙による非難やスランプから精神的に落ち込んでいるデルフィーヌに対して、エルは話し相手になったり仕事を手伝うようになり、デルフィーヌもエルに次第に依存していくにつれて、いろいろと不思議な出来事が起こっていく、というストーリー。さすがポランスキー監督だけあって、どんどんデルフィーヌの生活に入り込んでいくエルの行動がサスペンスフルに描かれていて、見ているこちらもハラハラドキドキする。
この映画の成功は、デルフィーヌを演じたエマニュエル・セニエと、エルを演じたエヴァ・グルーンの演技に依るところが大きい。ポランスキー監督の妻であるエマニュエル・セニエの演技が素晴らしいのはいうまでもないが、味方なのか敵なのかの区別がつきにくいポーカーフェイスの中に狂気を忍ばせているエヴァ・グリーンの演技が秀逸。この二人の演技を見るだけで、本作は十分に満足できます。