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チワワちゃんのzentのレビュー・感想・評価

チワワちゃん(2018年製作の映画)
4.3
学生仲間でもない、昔からの馴染みの仲間でもない、利害関係も特にない、なんとなく溜まり場に一緒にいる若者グループの青春群像劇。

登場人物の誰かに見る者すべてが共感するであろう過度に煌びやかで痛々しい青春の傷痕がまざまざしい色彩とスピード感溢れるカットの連続で目まぐるしく展開される。"エモい"という言葉はこの映画のためにあるといっても過言ではない。

脅威なのは新人・吉田詩織演じるチワワちゃんの存在。そこにいるだけで目線が彼女に向かってしまうような傾国の美女っぷりがこの作品の魅力を何倍にも膨れさせているのは確かで、それと対比するかのような門脇麦演じるミキもチワワちゃんへの嫉妬と羨望が綯い交ぜになったアンニュイな表情を窺わせている。
アッパーな音楽と極彩色に彩られたシーンの次ではミキの平凡な日常がありのままに描かれることが多く、こちらの感情を揺さぶりかけてくる。

チワワちゃんという蠱惑的で有機的だが非常に危うい存在にミキを含む周囲の人間がそれまでの彼女との関わりを淡々と語ることで進行していく本作は、"繋がっているようで繋がっていない" "よく話すけどお互いのことはなにも知らない"といった子供から大人になる成長過程で誰もが経験し得る他人と関わったことで感じる虚しさを、それでもどこかで他人と繋がりたい欲求のままに自らを痛めつけながら走り抜けていく刹那的な青春の輝きを巧みな演出と現代的なモチーフで活写している。
ぜひ映画内で描かれる年代の人たちに見てほしい。

エンドロールで流れるHave a Nice Day!の"僕らの時代"はまさにドンピシャ。ずっしりと余韻に浸れる。
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