はせぴょ

止められるか、俺たちをのはせぴょのレビュー・感想・評価

止められるか、俺たちを(2018年製作の映画)
4.4
若松孝二の名前を初めて聞いたのはいつだか覚えてない。ただにっかつロマンポルノを知ってから、先鋭的な作品を取るピンク四天王から遡ってると、必然的に若松孝二の作品に行き着いた。

「キスより簡単」「シンガポールスリング」なにも感じるところのない作品で、この監督の一体なにがすごいのか分からないまま、「餌食」「水のないプール」に。驚愕。

大学に入り、しがない映画サークルに入部。1年生の学園祭、わがサークルは「下血上映会」と称して女性の下半身から鮮血が滴り落ちるチラシを作り「胎児が密猟するとき」「闇のカーニバル」(山本政志監督)を上映。先輩が率先して息巻いた上映会。学生運動も全共闘も知らない自分がまるでマスターベーションのような反体制映画を突きつけられる。

しかし政治的なもの以上に鮮烈な映像表現に魅せられ若松作品過去作を掘る。

なにも響かない作品もありつつ、フィルモグラフィーを辿った中で出会った「ゆけゆけ二度目の処女」。私的若松作品最高傑作。
性の衝動を生命力と情動で一気に疾走していく快感。いまだこの作品を超える邦画の芸術作品はないというくらいの衝撃を受けた。

「止められるか、俺たちを」
世代はズレていながらも学生運動の余波を残し続けた大学にいた立場からすると、主役の吉積めぐみは自分に被るような錯覚に陥らされた。
動き続け、関わり続けていながらも、その中で自分の目的を見出せない(どう闘ったらいいのかわからない)、めぐみの姿に突き刺さるものを感じた。

大学4年。当時の空気感を味わいたくて入り込んだ新宿ゴールデン街。
本編にもロケ地として新宿とこの街が使われているが、やはり隠したくても映りこんでしまう今の背景があるのは相当ロケ地やカメラワークに苦心したのではないかと推測。
それでもゴールデン街の生きる証人「クラクラ」のマスター、波羽山文明さんがさりげなく登場しているところにこの映画のリスペクトを感じる。

「われに撃つ用意あり」で原田芳雄と桃井かおりが寄り添いながら全共闘時代と現代を対比して見せたコマ劇場も今はゴジラが天空に口をあけるビルに変わっている。

「止められるか、俺たちを」
若松プロダクションがまだ終わらない宣言を掲げた映画でもあり、新たな歴史を更新していく雄叫びの映画でもある、、と思いたい。

まぎれもない傑作である。
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