1970年前後の若松プロダクションに出入りする人々を吉積めぐみを中心として描いた人間劇ですが、登場人物のキャラクターが立っています。たくさんの人が出てきますが、主要登場人物はすぐに覚えてしまうほど。キャスティングの妙も特筆すべき。主役の門脇麦の佇まいはもちろんすばらしい。ARATAという俳優に特段思い入れはなかったのですが、パブリックイメージを覆すような演技で「若松孝二」していてすごかったです。足立正生役、荒井晴彦役もすばらしかった。そしてなにより、大島渚役に高岡蒼佑！ 出てきたときから一目で「これは大島渚だな」とわかるほどの演技でしたが、誰が演じているかわかりませんでした。キャストを見たら高岡蒼佑と書いてありびっくり。一種の発明です、もはやこれは。
そして吉積めぐみとは一体誰だったのか。映画『赤軍ーーPFLP』前後でこの映画は終わりますが、吉積めぐみがいなくなったあとも若松プロダクションの映画製作は続いていきます。そのあたりに思いを馳せながら観ると、感慨深いものがあります。「映画を作っているマジモンの人」という印象の若松孝二は本当に特異な存在だったのだな、と再認識しました。
