Miver2

人間の時間のMiver2のレビュー・感想・評価

人間の時間(2018年製作の映画)
5.0
結果として現在をしっかりと捉えている映画でメチャクチャ面白かったな。
政治家がその権力を間違って行使するその姿や行いはこの国の最高責任者と重なり合うかのようでもあったし、あの胸糞悪さを徹底的に描き切っているのが最高過ぎた♪

物語を観ていて、時の権力者に擦り寄って行く人達の利害関係の描き具合がとにかく素晴らしくて。
あの"共犯関係"を繰り広げられて行く物語の展開に釘付けにならずにはいられない面白さと凄さがあって。

なんかここまで現在を捉えている映画になってたのは偶然の産物なのは間違い無いと思うけど、しかしあまりにもリアル過ぎたな。
そして権力者に悪い奴等が擦り寄って行く様は、なんか「桜を見る会」に参加してた一部の人達と重なり合うように思えてならなかった。

その権力に擦り寄って来る人達がいるのはある種当然の事なのだと。
そしてその利害関係が一致して、上手く関係性を保って来てるからこそ、「桜を見る会」にも堂々と現れていたりする事に非常に納得だったし、思わぬ所で現実と重なり合う物語の素晴らしさを堪能する事が出来た。

繰り広げられて行く物語を観ていて、チンピラのボスを演じるリュ・ズンボム氏は今泉力哉監督と似てるなと観ていてしみじみ思ったりもしつつ。 
しかしながら、あの演技と存在感は見事だったなあ。
そして美菜の存在感が素晴らしかったし、またその姿や演技を観たいなと思った。
そして無言でその出来事や光景を見つめながら、自分の居場所を作り上げて行ってた老人の存在感もまた素晴らしかった。

物語に登場する政治家が行使するアレは先日国会で可決された物だったので、あまりにもタイムリー過ぎて驚いたけども。
そしてそれが間違った方向に、私利私欲のために行使されたらどうなるのか、その行く末があまりにもリアル過ぎた。

その権限を行使した事で繰り広げられて行く光景を観ていると、これを楽しんでいる権力者って現実社会でも必ずいるよなと感じたし、そのリアルさは尋常じゃない所でもあって。

繰り広げられて行く壮絶な物語の行く末を観ていて、塚本晋也監督「野火」をふと思い出す。
極限へと追い込まれたその先で生きようとするその姿や光景のリアルさ、その生命が映画の中に溢れかえっていた。

あと容赦ない欲望と暴力の果ての残酷さを体感しながらも、終わり近くになって映し出されるそのカット割りからは血に塗れた美が感じられた所があった。
それがとても良かったし、思わずグッと来た所でもあったな。

壮絶な物語が描かれて行く中で未来を感じる事が出来た所があったのがとても良かったしね。
白か黒ではない所でじっくり育てて行く、見据えて行く未来がそこにある映画でもあったなと思う。

容赦無く描いて行く物語の胸糞悪さが極められて行くあの凄まじさに只々圧倒されたし、何よりも結果として物凄くタイムリーな所を描いているディストピアな映画だったので最高でした。
Miver2

Miver2