ちんすこう

ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島のちんすこうのレビュー・感想・評価

3.8
本作はONE PIECEであってONE PIECEでない。細田守監督色の強い作品である。

ストーリーや構成はすごい面白いし、引き込まれるものとなっている。
前半には金魚すくいや輪投げ等でONE PIECEらしい楽しさやキャラクター間のやり取りがあるものの、作風や全体的な色味等でどこかダークな感じで不安が拭えない。祭りで盛り上がっているはずなのに、笑顔や明るさの裏に、影が潜んでいる、そんなイメージ。
そしてそんな不安が的中するかのように、物語が進行するにつれ、仲間の絆に少しずつ亀裂が入り、距離感が離れ、バラバラになっていき、ついに1人に…。
その様子は結構過激に描かれており、辛辣である。
さらに明かされる島の秘密とおまつり男爵の海賊団の真実。
少しずつ恐怖を煽ったことによる、真実が明かされたときの絶望感は半端ない。
普段ルフィは楽観的だからこそ、その効果は絶大であったし、強烈であった。

肝心の戦闘シーンも本来なら盛り上がるはずであるのに、心が躍らない。
仲間のために闘っていることはいつもと同じであるはずなのに…
そして、おまつり男爵を倒して、仲間が戻ってきたはずなのに…ハッピーエンド感も爽快感もない…
それはやはり、新しい仲間を見つけて前に進んでもよいのではないか、というメッセージ性が見て取れるからだろう…
ルフィがそんな選択をする可能性もあったと考えると…。

結論本作は、異色のONE PIECEであり、大人向けな作りとなっている。
剥き出しのメッセージと少しずつ心を蝕んでいくその構成は、見終わった後もスッキリしない感を残していくが、たまにはこういうONE PIECEもいいなと思える良作だ。

それにしてもここまでルフィを精神的に追い詰めたのは、赤犬以外には本作のおまつり男爵しかいないと考えると相当の猛者であったとしみじみ思う.
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