マクガフィン

騙し絵の牙のマクガフィンのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
3.6
軽快に進むストーリーと軽妙な会話にキレがあり、その拮抗さが心地良い。衰退する業界の中でバイタリティが溢れてでポジティブな者達の競演は、人・本・業界の価値観を下げないトーン。大物作家や内部批判もできない老舗出版会社や、広告頼みの雑誌業界の内情がリアルに描かれて、背景のクオリティをキープし続けることが興味深い。敏腕編集長・大泉洋演に巻き込まれて振り回される松岡茉優や、トカレフの扱いが絶妙。原作未読。

出版会社の〈保守〉と〈改革〉の内部対立は、出版業界への波及や、紙媒体の本から電子書籍のネットに広がる世界観。急速に変わる世界と資本主義・Amazonの問題提起がさり気なく、どんでん返しに舵を切らない後日談は、廃れるカタルシスと裏切りのカタルシスの妙の中で、自分の信念を貫く模様が爽快に。