七沖

イップ・マン外伝 マスターZの七沖のレビュー・感想・評価

3.8
〝詠春拳、再び。〟
『イップマン 継承』でマックス・チャンのアクションに見惚れたので、これは嬉しいスピンオフだった。

イップマンとの戦いに敗れたチョン・ティンチは、詠春拳を封じて、香港で幼い息子と小さな商店を営んでいた。だがたまたま関わった騒動をきっかけに、彼は麻薬密売事件に巻き込まれていく…というストーリー。

「詠春拳 チョン・ティンチ」
度重なる敵の悪行に静かにキレて、長らく封印していた詠春拳の構えをとるチョン・ティンチ!そして流れ出すイップマンのテーマ曲!
これは負ける気がしない…!
ミシェル・ヨー、トニー・ジャー、デイヴ・バウティスタ共演ということで、近年のカンフー映画のなかではかなりキャスト陣が豪華な一作だ。

香港という舞台設定を活かした電光看板を渡り歩くアクション、トニー・ジャーとの一騎打ち、ミシェル・ヨーとのハイスピード刀バトル、どれも見応えがあった。だが、一番いいのは、やはりラスボス戦だ。圧倒的な体格差を乗り越えどう勝利するか?その醍醐味が詰まった格闘だった。かつてブルース・リーも『死亡遊戯』で人種の異なる体格差バトルを繰り広げたが、あちらよりも一進一退の戦いになっていて手に汗握る。かつてイップマンに食らわされた技を自分のものにして敵に食らわせるシーンは胸熱だ。

アクション面はほとんど文句なしだが、ストーリーがやや弱いか。
最初はあんなに大切に庇っていた一人息子が中盤からは空気で、ラストの戦いに赴くティンチを呼び止めに出てきた時に「そういや息子いたな」と思ったくらいだ。
また、詠春拳を封印していた理由も分かりづらく、ここがしっかり描かれていれば、ラストで封印を解放するカタルシスがさらに増したはずだ。

とはいえマックス・チャンが演じるチョン・ティンチの活躍を再び観ることができただけで、大満足の一作だった。ラストの誰が本当の悪かはっきりさせる展開も好み。ぜひ一作で終わらせず、シリーズとして続けて欲しい。
七沖

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