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ブラック・クランズマンのhi1oakiのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.2
スパイク・リーとジョーダン・ピールとジェイソン・ブラムが組んだ(すごい)、コメディという鎧を纏って笑わせながら、ジワジワとジャブを叩き込み、最後にドスンと刺してくる作品。
“世界は自分が定めた潔癖さで満ちていないと気が済まない”というタイプの“正義”を振りかざす人達は本当に怖い。そういう人達は集まれば集まるほど独自のロジックや利害が共鳴して強固なものになってしまう。それは何もアメリカだけのことではなく、人種差別の問題だけでも無い。
そういった世の中の間違っている事や理不尽な事を眉間にしわを寄せて辛辣に批判する事もそれはそれで有効なのかなとは思うけど、それを笑いに忍ばせて振り幅でハッと気付かせる方がクレバーなのかなとも思う。それは理詰めでは納得しようとしない人にも“もしかしてスクリーンで笑われているのは自分なのか? あるいは自分の身内なのか?”と恥ずかしく思うきっかけになり得る。コメディならではの闘い方だ。
ただ悲しいかな日本ではコメディアンやコメディ作家と呼ばれる人達がその役割を担っている事は少ない。“お笑い”は“お笑い”でしかなく、そこに政治や思想を絡ませると煙たがられる。最近も某芸人が某アイドルや世論に政治を語るなとか、浅い知識で騒いでるとか言われているのを見て残念な気持ちになった。おかしいなと思っても、それについて詳しくなければ声を上げるべきではないのか? 専門家でないなら黙って従うべきなのか? その思考停止こそ理不尽な権力の思うがままなんだけどね。
スパイク・リーが今も闘い続けなければいけないのは、世界が何も変わっていないから。コメディのヒールのような人物が、様々な国のとんでもない地位に立って、とんでもないことをしでかして、とんでもない世の中になっている。だからこの映画もスカッとさせて笑わせた後に厳しい現実を突きつけてくる。
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